今回は箱根外輪山の一峰、明神ヶ岳登山をご紹介します。
関東を代表する温泉郷である箱根。
登山では丹沢と共に神奈川県内で人気の山域であり、山行後の温泉と合わせ、登山、温泉、観光と1日で大いに楽しめます。
明神ヶ岳とは
(金時山側から見る明神ヶ岳)
標高1,169mの山で、外輪山では北東部に位置しています。
麓からもそれと分かる大きな山容をしており、山頂からは隣接する金時山、中央火口の大涌谷、遠方には丹沢も望むことができます。
外輪山の中では比較的アクセスは良く、金時山方面、大雄山の最乗寺からアプローチでき、登山行程は片道2~3時間と日帰り可能な範囲のため、多くのハイカーに親しまれています。
箱根とは
山としての箱根とは、金太郎で有名な金時山、今回登った明神ヶ岳などを含む複数の山が火口を囲んだ外輪山です。
中央火口は有名な大涌谷がそびえ、現在も活発な火山活動が確認されています。
外輪山1周
火口を囲む外輪山は、健脚の方であれば1日で1周することが可能です。
所要時間は10時間前後、約50㎞の道のりです。
単発で各座を登ることも可能ですが、一度に縦走することで山のスケールをより実感することができます。
行動時間、距離共にハードな行程になるので、無理はせず十分な準備をもって挑戦してみましょう。
明神ヶ岳登山に適した時期
箱根は夏頃までの湿度が高く、年間降水量も全国的に高いため、樹林帯を通る最乗寺ルートはすぐに全身が汗ばみます。
別ルートからも笹原を通過していくため、比較的乾燥して天候が落ち着いた秋以降で快適に登ることができるでしょう。
湿度と風速について
登山前に当日の天候を確認されているかと思います。
晴天か雨か、最高、最低気温といった基本情報の確認だけでなく、湿度や風速も確認するとよいでしょう。
湿度が高いと上述した衣服内の蒸れが不快感となり、衣服の濡れは体温の低下を招きます。
またルートが複数ある場合は、多湿を回避できるルートを選択することもできます。
風速が高いと滑落の危険性、湿度と同じく体温低下を招く可能性が予測されますが、湿度と異なり、樹林帯を通るルートであれば風を和らげることができます。
夏場に適度に風があれば、無風より快適に登ることもできるでしょう。
明神ヶ岳トイレと水場
トイレは最乗寺内に設置されていますが、登山道上には無いので、事前に済ませておきましょう。
水場はルート上に神明水呼ばれる湧き水がありますが、水枯れしている場合もあるので、持参するのが良いでしょう。
明神ヶ岳コースタイム
参考タイム
登り
最乗寺ー見晴らし小屋:1時間
見晴らし小屋ー神明水:30分
神明水ー山頂:1時間10分
筆者参考タイム
最乗寺ー見晴らし小屋:40分
見晴らし小屋ー神明水:20分
神明水ー山頂:50分
下り
参考タイム
山頂ー神明水:55分
神明水ー見晴らし小屋:20分
見晴らし小屋ー最乗寺:40分
筆者参考タイム
山頂ー神明水:40分
神明水ー見晴らし小屋:15分
見晴らし小屋ー最乗寺:40分
ストック(トレッキングポール)の活用
今回の大雄山最乗寺往復ルートでは、後述する赤土で足元が滑りやすく、体力が奪われやすい状況になります。
こうした時には、登山用のストックを使うと良いでしょう。
ストックは2本1セットで使用します。
滑りやすい所で支点として使い、その他でも足のサポートとして使う事で、疲労を軽減し、長時間の歩行が可能になります。
中でも下りでの支点確保には非常に重宝されるアイテムで、疲れが出やすい復路でのサポートはとても心強い味方となってくれるでしょう。
ストックはグリップがT型とI型の物があり、T型は主に歩行時の足のサポートに効果的ですが、支障が無ければ汎用的に使えるI型を選ぶと良いでしょう。
明神が岳登山持ち物
- ザック(ノースフェイス FP ハイブリッド 30)
- レインウェア上下(モンベル)
- 防寒着(モンベル ライトシェルジャケット)
- 予備ウェア(モンベル)
- ヘッドライト(モンベル)
- 登山地図(昭文社)
- コンパス(SILVA)
- ツェルト(モンベル U.Lツェルト)
- 水筒(モンベル フレックス ウォーターボトル)
- 水筒(モンベル クリアボトル)
- クッカー(スノーピーク 焚)
- 飯盒(トランギア メスティン)
- ケトル(トランギア)
- チタンマグカップ(スノーピーク)
- 箸(モンベル 野箸)
- ナイフ(オピネル)
- ライター
- ファイヤースターター
- シングルバーナー(プリムス フェムトストーブ)
- ガスカートリッジ(プリムス)
- アルコールバーナー(トランギア TR-B25)
- 燃料ボトル(トランギア)
- ウッドストーブ(TOAKS アルコールバーナーの五徳として)
TOAKSソロ BP ウッドバーニングストーブSTV-11のメリットデメリット
- 食糧(米、シウマイ、調味料)、コーヒー)
- 調味料(醤油、油)
大雄山最乗寺ルート
大雄山最乗寺ー見晴らし小屋
登山口の目印は大きな赤い下駄です。
目の前の橋を渡り、樹林帯を登っていきます。
所々道が荒れており倒木もあるので、足元に注意しましょう。
山頂までのルートは火山灰などが堆積した赤土が目立ちます。
赤土は水を含むと滑りやすく、登山靴のソールを埋めグリップ力も下がるので、斜度がある際どい場所、下降時には手を木々に添えながら歩くと安全性が高まります。
林道を2つ横切り、5分ほど歩くと見晴らし小屋が見えてきます。
眺望はあまりありませんが、切れ間から丹沢の山々が見えています。
ここで全体の1/3になるので、一度足を休めて水分補給をしておきましょう。
《小屋の利用について》
今回の見晴らし小屋に限らず、山中にはこうした無人の小屋が幾つか見られます。
登山者の利用を想定した無人の避難小屋は全国各地に存在し、厳しい環境下に晒されやすい登山者にとって、雨風が凌げ、安全を約束してくれる無人小屋の存在は、暗闇に灯る明かりの様に非常にありがたい設備です。
とはいえ無人小屋ではなく、利用されなくなった、もしくは家主不在などによって老朽化が進んでいる、登山者が利用する事を前提としていない一般的な小屋もあります。
鍵が開いて入室できるところもありますが、荒天、その他の非常時を除き、小屋に入るのは控えましょう。
持ち主がいるということも勿論ですが、倒壊の危険性があるほどに朽ちかけている小屋もあり、安易に中に入ると倒壊に巻き込まれる可能性もあります。
見晴らし小屋ー神明水
登りは続き、10分ほど歩くと視界が少し開けてきます。
ここからは樹林帯と視界が開ける場所が交互に続いていき、振り向けば相模湾が視認できます。
こうした景色や道は、正に箱根の登山道らしい道となり、火口、海、周辺の山々など、また富士山も視認できるのは、外輪山としては貴重な山域ではないでしょうか。
※樹林帯から視界が開けた先に、老朽化したリフトが見られます。
数十年前、麓から明神ヶ岳までを繋ごうという計画があったようです。
しかしその計画は頓挫し、当時の部品が今も残されている様でした。
当時と現在では豊かさの価値観も変わりつつあり、この残骸を見ていると、儚さと哀しさが入り混じった、タイムスリップした気持ちになります。
リフトを越え、傾斜が落ち着いたところに湧き水があります。
神明水と呼ばれ、火照った体を冷やすには絶好の場所です。
神明水ー山頂
山頂へは特有の赤土を慎重に登りながら、斜面をトラバース気味に歩いていきます。
山頂直下で明星ヶ岳との分岐になり、明神ヶ岳への最後の登りになります。
変わらず赤土に苦戦しますが、足裏全体を当てるように確実に登っていけば大丈夫です。
登り終えると視界が開け、大涌谷、丹沢、相模湾、金時山などの眺望が素晴らしい山頂に到着します。
縦走ルート
明神ヶ岳以降、マイカーでなければ金時山、明星ヶ岳などへ縦走することが可能です。
中でもメジャーな金時山へは、下山後の交通の便も良く、箱根湯本駅へ降りることができるので、温泉に浸かって帰ることができます。
金時山までのルートや時間
金時山ー明神ヶ岳間は、金時山直下の岩場、笹原、明神ヶ岳への稜線で構成されています。
この中で笹原の道はルート中最も距離が長く、また視界も遮られアップダウンを繰り返すので、明神ヶ岳からの縦走の場合、足の疲労に十分留意しましょう。
金時山直下の岩場を超えると、富士山の眺望が素晴らしい山頂に到達します。
下りは仙石原バス停を目指し、往路を途中まで引き返し、金時神社登山口か仙石原バス停そばまでの登山口へ降りていきます。
金時山から両登山口までは1時間弱です。
いかがでしたか。
自然と人とが育んできた歴史ある箱根を、是非登山で楽しんでみてください。