登山のパッキングの基本とコツをご紹介します。
長時間、重い荷物を背負って歩く登山において、いかに快適に疲れなく行動できるようにするかは、登山における
永遠のテーマです。
道具は年を経るごとに変化し、軽量化、合理的なアイテムが増えていく事で、パッキングは進化していきます。
パッキングする基本要素
ザックに荷物を上手に入れるには、幾つかの要素を考慮し、収納していきます。
重量
形状
使用頻度
行動中の増減
気象条件
これらを元にパッキングしていきます。
パッキングの基本
山行に合った適切なサイズを
荷物を入れる前の部分となりますが、山行に合わせた道具の選定、そして少し余裕を残しつつも、丁度に収まるザックを選びましょう。
ザックにはそれぞれ特性がありますが、容量や用途を想定した重量が設定されており、これを大きく外れるとザックの性能を十分に発揮できなくなります。
軽量向けのザックに過剰な物を入れると、ハーネスが上手く荷重を分散できず、60Lサイズに20L分しか入れないと、荷物が揺れて余計な負荷がかかってしまいます。
シンプルか多機能か
ザックにはサイドポケットのないシンプルな1気室タイプ、サイドポケットを多数配置した多機能型など、用途や登山者に合わせて非常に多く展開されています。
パッキングという面ではサイドポケット他、デイジーチェーンなどの機能が充実したタイプは収納しやすく、行動中に増えた荷物を増やすにも苦労しません。
経験が浅い方は、少し重くなりますがこうした多機能型のザックを使用すると良いでしょう。
作りもブランドによりますが、重量はあるものの丈夫に作られているものもあります。
経験を経ると、付属の機能が移動中に木々や岩に引っ掛かってしまい動きづらかったり、荷物の配置が固定され習慣化されると、収納箇所がメインコンパートメントのみでもストレスなく収納でき、機能が少なくシンプルなザックは縫製箇所も少なく軽い傾向になります。
パッキングのコツ①
重量のあるものは上部に
同じ重量のザックでも、重たい道具を下に入れておくと、上部に入れておく場合と比較し、背負っていると重たく感じます。
また下に引っ張られバランスも悪くなってしまうので、重量のあるものはなるべくザックの上部に配置するようにします。
重量のあるものは
登山中に重たいと感じるものは人によって異なりますが、水はその最たるアイテムです。
次いで生もの、テントなどの重量が変化しにくいものになります。
水場が無い稜線、沢沿いから離れた場所、硫黄泉に近いなど、水が確保しづらい場所では事前に確保しておいての行動が必須となり、必然的に重量が増していきます。
山小屋までの距離、必要摂取量を計算し、余裕を持たせつつも過剰にならない量を確保しておきましょう。
使用頻度の高いものは取り出しやすい場所に
基本的な事ではありますが、抜け落ちると行動中のパフォーマンスが下がりやすくなるので、当日の行動を想定して配置しましょう。
行動食、水分は想像しやすいですが、地図、小銭、ライターなどの小物は見落としやすく、行動食が取り出しにくいと休憩時の摂取を怠ってしまい、結果体内のエネルギー以上の消費となり、行動不能の可能性も出てきます。
行動を想定した配置
日帰りでは使う道具も限定されますが、1泊以上の山行の場合、パッキングした道具の大半は使われると考えられます。
そのため、先述の使用頻度の高いものの他、行動開始から終了、終了にいたるまでの行動を想定しておくと、パッキングもしやすくなります。
テント、寝袋はいずれ使うが、行動終了後なので優先度は低く、行動中に大休止するのか、クッカーを使用するのかでも配置は変わってきます。
パッキングのコツ②
ウエストバッグの活用
使用頻度の高いものは、メインザックとは別のバッグに収納しておくと、準備の段階からストレスなく収納、行動中も出し入れが快適になります。
1泊以上の山行で、睡眠時にそばに置いておくことで貴重品などの管理もしやすく、出発準備の効率化、出発までの時間短縮は行動中の余裕につながり、結果的に安全な山行が可能になります。
ウエストバッグを始め、肩にかけるサコッシュ、ショルダーハーネスに外付けるポーチなど、自身の好みに合わせて活用すると良いでしょう。
気象条件を考慮した配置を
普段、レインウェアなどの特定の気象条件で使用されるアイテムは、割と隅に配置していることが多い傾向にあります。
雨天、強風時の体温低下の防止に役立つレインウェアですが、晴天、無風が約束された状況下では出番もなくなります。
私は普段ザックの奥底にレインウェアが収納されています。
晴天でも天気が下り坂の予報、風速が高い日、もしくは深夜の冷えた時間での行動が予測されるなど、限定的な場面で使用されるアイテムは、当日の気象条件と、今後の予測を考慮した配置をしておきましょう。
スタッフバッグの活用
登山を重ねていくと、始めたころに比べて道具は洗練されつつも、道具は増えていきます。
調理をすればナイフが必要になり、パーティでの山行になれば、ファーストエイドキットの充実も必須となり、ヘッドライト、ツェルトなど登山専用のアイテムも増えていきます。
細々としたアイテムを収納するには、道具をカテゴリーごとに分けていくと管理がしやすく、また収納時間の短縮、次回山行時の準備も楽になります。
スタッフバッグは容量、カラーなど管理がしやすいように豊富なバリエーションがあります。
可能であれば簡易的でも防水機能が付いている物を選ぶと良いでしょう。
パッキングのコツ③
形状を利用して無駄な空間を無くす
先述したように、隙間があるとその分荷物が揺れ、登山者に過度な荷重がかかってしまいます。
これを防ぐには、できる限り空間を埋めて荷物のブレを抑えるのが効果的です。
銀マットは内部を包むように収納したり、細かい隙間はウェアで埋めるなど、またボトルや収納したダウンジャケットなどの丸く長い形状のものは、横にするより縦に置いた方が荷物が入れやすく、隙間も埋めやすくなります。
外付けは極力少なめに
(北アルプス某沢遡行中にて 岩場に道具が引っかかると神経も使ってしまう)
外付けでアイテムを取り付けると、障害物に引っかかったり、万が一脱落すると後続への被害、また固定が不十分だと余計な体力を使ってしまうので、ストック、ピッケル、ヘルメットなど、専用のホルダーがザックに取り付けられているアイテムを除き、ザックの中に収めるようにしましょう。
登山道具の外見は華美な物が少なく機能的な形状をしており、これは機能不全=死につながる環境下にいる登山ならではです。
サイドポケット、ギアラックなどの付属も、使用用途を超えた取り扱いをしないように注意しましょう。
パッキングの一例
私の場合ですが、夏の日帰りの場合、バックの下部から記載すると以下になります。
《メインコンパートメント》
- レインウェア上下
- 着替えのウェア
- ツェルト
- クッカーなどの調理器具
- 食材
- 水
- タオル
《ショルダーハーネス》
- 地図
- コンパス
- 携行ボトル
《サイドポケット、またはウエストバッグ》
- 小銭
- 行動食
- ヘッドライト
- ナイフ
- ライター
- ファイヤースターター
- サングラス
いかがだったでしょうか。
パッキングが上手くいくと、効率的な登山が可能になるほか、理にかなった収納ができると、重心のブレも減り、歩き方が綺麗になります。
自身ならではのパッキングを習得し、是非その効果を実感してみてくださいね。