今回は人間にとって脅威となるヤマビルについて、対処法や活動時期をご紹介いたします。
山には多くの生物が生息しています。
鹿や熊といった大型の動物から、岩魚や狐、蜂などの中型から小型まで、豊かな自然に多様な命が息づいています。
一度そのフィールドに入れば、人間にとって命を繋げる食糧や存在を脅かす存在になり得る山の生物。
ヤマビルとは
体の前後に吸盤を持つ、一見ミミズのような生物です。
殆どは水中に生息していますが、ヤマビルは唯一陸に生息するヒルで、日本国内では本州や離島にも生息しています。
体長は3㎝ほどで、生命力が強く、踏み潰すくらいでは絶命せず、樹木の葉に忍び、生物を察知すると取り付きます。
ヤマビルに噛まれたらなぜ血が止まらないの?
ヤマビルは毒や致命的な外傷を与えることは殆どありません。
登山者にとって脅威なのは、その吸血行為とその不快感、治癒が遅れるヒルジンという成分です。
吸血行為事態は1分もかかりませんが、ヒルジンが血液凝固を遅れさせてしまうため出血が止まらず、吸血して膨れ上がったヒルが衣服の下から落ちてくる姿はとても愛嬌があるとは言いがたく、気味の悪い姿が、登山者から敬遠される要因となっています。
ヤマビルの活動時期と生息場所
冬を除く時期に活動が可能で、湿気が常時多湿な場所では特に活発に活動します。
登山においては梅雨の前後からその姿が顕著に見られるようになり、落ち葉や樹林帯では注意が必要です。
生息場所は前述の多湿という条件が満たせる場所、樹林帯、苔などによく生息しています。
乾燥には非常に弱く、岩稜や秋の終わりなど、好まれる生息地を把握していれば、被害は格段に軽減できます。
気温は約10度前後が境の様で、これを下回ると動かなくなります。至適温度に達すると活動を再開します。
水中でヤマビルに噛まれることは?
ヤマビル以外のヒルには水中で泳ぐ種がいますが、ヤマビルは水中では生存できません。
そのため、登山形態で最も被害に遭いやすい沢登りでは、ヤマビルの生息が確認されている地域においては、できる限り水流沿いを進んでいく事でヤマビルからの被害を回避しています。
ただし短い期間であれば生存できるようですが、絶えず流れ続けている渓流沿いにおいて、水中でヤマビルの被害に遭うことはないかと思われます。
ヤマビルの拡散理由
元々生息場所が限定されていたヤマビルでしたが、近年、その生息範囲が拡大しています。
ヤマビルは大型動物に吸血し、吸血が終わると剥がれ落ちていきます。
この大型動物が繁殖したことにより、その活動範囲が広がったといわれ、また人間が登山、その他で自然環境に入ったことも要因と言われており、吸血され続けた個体はその後免疫ができ、ヤマビルに吸血されにくくなると言われていますが、この経験が無い人間が入る事で活動範囲が広まったという事です。
神奈川県の丹沢においては、山域の許容量を超えた鹿の繁殖(現在は頭数調整による狩猟も行われています)も原因とされ、人間の文明による影響を顕著に受けているといえるでしょう。
ヤマビルの天敵と活動時間
(夜間も活動できるので、安心せずに対策しておきましょう)
ヤマビルには脅威となる天敵が存在しません。
捕食する動物がいないということもあり、ヤマビルが活動を制限されるのは、その生育環境と移動となる先述の大型動物の存在のようです。
この活動制限ですが、ヤマビルは特に昼行、夜行性ということも関係がなく活動を続けられるようです。絶食にも数ヶ月間耐えられる力を持っています。
ヤマビルの対処法
ヤマビルはわずかな隙間や目の荒い衣服であれば潜り込んで吸血行為を行います。
これを回避するために、足元はスパッツを付け、長袖を着用するなど、極力地肌を露出しないようにしましょう。また上記の生息地を考慮しておき、生息域に足を踏み入れないことも大切です。
ヤマビルは塩やアルコールに弱く直接吹きかける、また足元などに塗布するだけでも一定の効果があるといわれています。
その他、専用の忌避剤がアウトドアショップで販売されており、効果は抜群です。登山前に塗布しておけば予防になるので、夏の梅雨明けなどは持っておくと便利です。
もしヤマビルに噛まれたら
吸血されたら無理に剥がさず、先程の塩やアルコール、またライターやバーナーなどの火に当てるという荒業で剥がすことができます。
こうした道具を持ち合わせていない場合、最悪吸血が終わるのを待つしかありません。
無理に剥がすこともできますが、皮膚が傷ついてしまいます。
剥がした後は傷口を綺麗に洗い、消毒用エタノール等で処置します。
何もしていないとヒルジンが残り、出血が続いてしまいます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ヤマビルは登山において大きな脅威ではないものの、被害に遭うと不快に感じることは間違いありません。
とはいえ、人間の一方的な都合を押し付けず、彼らの生息範囲にはなるべく近づかない、上述のような環境の配慮(吸血対象の動物の頭数調整、生育環境の調整)を行う事で、共存することが良いのではないでしょうか。
しっかり予防して、快適な登山を楽しみましょう。