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トレッキングポールは本当に邪魔なの?どんな人にあると便利な物?

スキーにはストックが必須ですが、登山にストック、つまりトレッキングポールは必要と言えるでしょうか?

かつては…と言っても30~40年も前のことですが、当時の北アルプスで、トレッキングポールのようなものを持つ人を見かけたことはありません。

たまにスキーのストックを代用している人は見かけましたが…。

さてこのトレッキング(英語:Trekking)という言葉の意味は、登頂を目指す登山に対し、山頂にはこだわらず山のなかを歩くことを目的とした、いわば山歩きといったところです。

この言葉が日本に入って来た40年ほど前は、ヒマラヤトレッキングという言葉が流行した時期でもありました。

その当時から時代を重ねた現在では、より軽い素材が開発され、トレッキングポールも軽さと強度、そして機能性に優れた様々な製品が出てきました。

とはいえ山に登る人たちの間では今でも、トレッキングポールの必要性という点について様々な意見があるようです。

トレッキングポールが広まった背景

最近山に登ると、多くの人たちがトレッキングポールを手にしているのを目にします。

H28年8月の山の日に総務省が公表した「登山・ハイキングの状況」という資料によりますと、登山に出かける最も多い年齢層は、男性が65歳以上で女性は60歳以上となっているとのことです。

かつての団塊世代の多くがリタイアを契機に山に登り始めたようです。

総務省のHP

若いころはともかく高齢者になると足腰が衰え、膝にも不安を抱えていることだと思います。

こうした高齢者がトレッキングポールを手にするのはごく自然な流れだと思います。

最近あるメーカーが行った調査の結果では、山に登る人の半数以上がトレッキングポールを使っているようです。

このように高齢者がまず使い始めたトレッキングポールを、若い世代が見て、或いは試して、その利便性を認識して広まっていったようです。

トレッキングポールは必要ないと思う方の、その理由とは?

最近では約半数の人がトレッキングポールを使用していますが、その一方で自分には必要ないと、頑なに拒んでおられる人たちがまだ半数はいるのです。

ではそういう彼らが、トレッキングポールを持っていないのは、どのような理由なのかを調べてみると、次の通りでした。

①今の自分には必要ない

最も多かった意見は、今の自分は足腰の強さも含めて、体力的にはまったく問題もないので、自分の身体だけで登りたいと思っている。

それが結果として筋力の強化やバランス感覚の向上につながると思っているようです。

②邪魔になる

両手でトレッキングポールを持っていると、例えばポケットのなかのものを取り出そうとしたり、水を飲もうとしたり、または写真を撮ろうとしたりするときなど、何をするにしても邪魔になるということがあるようです。

そして岩場を登るときは両手を使うことが必要になるため、ポール折りたたんでリユックに収納するなど、要らぬ手間がかかることもあるようです。

つまりトレッキングポールを持つことの利便性というより、むしろそれを持っていることが逆に負担になると感じているようです。

つまり登山の時はいつも両手をフリーにしておきたいと思う人にとって、トレッキングポールはとにかく邪魔なものだと思えるようです。

③使いづらく疲れてしまう

正しい使い方を知らずに使うことで、腕や手首を痛めたり、また逆に疲れてしまうこともあって、トレッキングポールの良さをまだ見いだせないでいるという面もあるようです。

④登山道、環境保護のために使用しないという人も

またトレッキングポールを使わないその他の理由として、トレッキングポールの先端にある石突きが登山道を痛めるというのもありました。

石突きは登山道を痛めない、或いは周辺の植生や木でできた道を痛めないために、雪道や岩場以外ではゴムキャップをつけて歩くことが求められます。

けれどもゴムのキャップの取り外し取付が面倒なことから、的確にやらないこともあると言います。

このようにトレッキングポールを持たない、或いは使わないと言う人たちにとっては、それぞれ独自の理由があるようです。

 

トレッキングポールはどんな人にあると便利なのか?

トレッキングポールを使う効能とは、歩行の際に両足に加えて腕の力も使う訳ですから、推進力の向上につながります。

そして山道を歩いていると、地面の凹凸や石ころに乗り上げるなどをしてバランスを壊すものですが、トレッキングポールはそんなときの支えになります。

また腕力を使って力の分散する訳ですから、膝や腰の痛みを抱えている人たちにとっては、その軽減にもつながります。

つまりトレッキングポールは歩行のサポートをしてくれる訳ですから、体力の低下やひざに問題を抱えている人にとっては、特に下り坂などで上手に使えば、これほど便利で有り難いツールはないと思うことでしょう。

これから山を始める若い初心者には?

これまで述べてきたようにトレッキングポールは、衰えた身体機能を補うものですから、これから山を目指そうとしている若い人にはあまりお勧めできません。

彼らは自分の足で歩くことで基礎体力をつけなければなりません。

加えて登山には必須の、バランス保持能力の向上は自力で登ることで初めて身につけることができるのです。

ですから基礎的な身体能力が出来る前に、こうした道具に頼ってはならないのです。

因みに国際山岳連盟では、特に40歳以下の青年層のトレッキングポールの使用を推奨しておりません。

国際山岳連合医療部会HP

山登りをこれから続けていく人に必要なのは、不整地を歩くことによってバランス感覚を身に着けることが必要だからです。

 

これから山を始めようと思う年配の初心者には?

或る程度の年齢に達した人がこれから山を始めようとする場合、トレッキングポールを使うか否かは、その人の身体能力次第ではないかと思います。

まだ十分な身体能力があるのなら、これからも筋力やバランス保持力を養成するために、できるだけ自分の身体を使って登ることをお勧めします。

登山をする上で重要なのは特にバランス保持力です。

人は体幹力というか、身体の様々な筋肉を駆使してバランスを保っています。

また下り坂では特に足首周りの筋力を使って、うまくバランスを保っているのです。

ですからこうした筋力を鍛えなおそうと思うのであれば、トレッキングポールを使うべきではないでしょう。

しかし自分の体力が衰えてきた、或いは膝に問題を抱えているような人であれば、トレッキングポールを積極的に使うこともいいでしょう。

 

トレッキングポールの種類やその仕組みについて

トレッキングポールの必要性については様々な見方や考え方のあることに、これまで触れてきました。

体力の衰えをやっと自覚して、これからは必要と思う方に対して、ここではトレッキングポールにはどのような種類があって、どのようなものを選べばいいのかについて見ていきたいと思います。

グリップの種類

トレッキングポールのグリップの形はI型とT型の2種類があって、それぞれに特徴があります。

(I型)

グリップの形がスキーのストックのようにストレートになっていて、軸を握るようにして持ちます。

このI型は2本1組で使うのが一般的です。

平坦な道では推進力の補助に最適で、足元の悪い山道ではバランスを取りやすいというのが特徴です。

けれども使い方によっては逆に腕が疲れてしまうこともあるということです。

(T型)

グリップの形がT字型になっているため、上から握ることになります。

ちょうど杖のように1本で使うことが多く、体重を乗せやすく、その分少ない力で握れて疲れにくいということが特徴です。

 

素材は2種類

トレッキングポールに使われる素材は軽さが求められることから、アルミとカーボン製の2種類が主に使われていますが、それぞれの特性は素材によって変わってきます。

(アルミ)

カーボンに比べて少し重いのですが、安価で折れにくいのが特徴です。

(カーボン)

アルミに比べて軽い割にはしなやかで、強度がある程度あります。しかし過度の重さや衝撃が加わると折れることもあり、アルミより高価です。

収納方法は2種類ある

山に登る者にとって最も興味のあるのがこの収納方法で、いかにコンパクトであるかだと思います。

その収納の方法は次の通り2種類あります。

(テレスコーピング式)

望遠鏡のように筒を回転させて長さを調節できる収納方法で、耐久性が高く安価なのが特徴です。

けれども折りたたみ式に比べて、収納サイズがかさばるのが難点です。

(折りたたみ式)

これは軽くてコンパクトに収納できるので、携帯性を重視する人は、これを使うことが多いようです。

なおこの折りたたみ式にはシャフトをある間隔でロックすることが必要になりますが、その方法は次の通り4種類があります。

・レバータイプ:長さ調節が簡単で素早く準備ができる。

・スクリュータイプ:一般的に使われているねじ込み式で、シャフトを回して長さを調節できます。安価ですが、シャフト締め付けの力加減が必要です。

・ピンロックタイプ:シャフトに一定間隔で埋め込んでいるボタンで長さを調整します。これはとても軽くコンパクトですが、強度の弱いところが難点です。

・上記3種類を組み合わせたタイプ:それぞれのいいところを組み合わせたものです。

 

トレッキングポールの主なメーカー

トレッキングポールのメーカーは結構沢山ありますが、そのなかで主要なメーカーは次の通りです。

価格は安いもので4,000円程度から高価なものは20,000円強のようです。

  • LEKI(レキ):1948年ドイツで創業のポール専門メーカー
  • Black Diamond(ブラックダイヤモンド):USAユタ州の登山用品メーカー
  • MONTBELL(モンベル):1975年創立の日本の登山用具メーカー
  • SINANO(シナノ):長野県のポールメーカー
  • マジックマウンテン:日本の登山用品メーカー
  • Evernew(エバニュー):日本のスポーツ器具メーカー
  • Coleman(コールマン):USAのキャンプ用品メーカー
  • ヘリテイジ:日本の登山用品メーカー

 

まとめ

トレッキングポールの使用については、あくまで機能を補う補助的な位置づけにすることが必要で、これから山を目指そうとする若い人たちは、自分の力で歩くことによって筋力の強化とバランス保持能力の向上を目指すべきでしょう。

一方、体力が低下された方や、膝に問題を抱える方などには、トレッキングポールを使用することが望ましいかも知れません。

その場合は正しい使い方をしっかりマスターしておくことでしょう。

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