剱・立山

水平歩道(黒部)すれ違いが困難なヘルメット必須なルートを紹介!温泉情報も。

水平歩道は、富山県黒部市のトロッコ列車の終点、欅平から仙人ダムまでの13キロ、黒部川の上流沿いを歩く登山道です。断崖絶壁の景色を歩くスリリングなコースとして人気です。ヘルメットの必要性、登山者とのすれ違い方、トイレやアクセス、難易度などをご紹介いたします。

黒部水平歩道ってどんなとこ?

富山県の黒部渓谷にある「水平歩道」は、勾配が急で水量も豊富な黒部川の電力開発を目的に、調査や資材運搬のために戦前に作られた、歴史ある歩道です。ピークがない登山道なので、”登る”というよりも”歩く”というイメージ。

標高1000mの岩壁をほぼ水平にコの字に削られて作られた道は、広いところで道幅は1m、狭いところで60cmしかなく、毎年滑落事故の報告があり、緊張感が必要な危険をともなうトレッキングコースです。「黒部に怪我なし」(落ちれば怪我ではすまない)と言われているのも頷けます。

黒部川水系の電力開発の歴史と密接な関係がある、水平歩道。
トライする前に、お勧めしたい本があります。作家吉村昭氏が書いた小説「高熱隧道(こうねつずいどう)」です。300名以上の犠牲者をだしながらも、昭和15年11月に完工した黒部第三発電所。人間の侵入を拒み続けてきた黒部渓谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯にトンネル(隧道)を掘鑿する難工事の実話をもとに描かれた記録小説です。大自然の猛威と対決する、男たちの執念を描いています。
吉村昭「高熱隧道」を読んでいると、戦前の人々の偉業を感じ、讃えながらの感慨深い思いに浸りながら、水平歩道を楽しめますよ。

黒部水平歩道を登山できる時期はいつ?

豪雪地帯である黒部渓谷。毎年、残雪が消えてから水平歩道の整備が開始されます。その整備が終わる9月上旬から10月下旬までの、約2ヶ月のみ、水平歩道が開通されます。残雪の状況や、崩落などのダメージによって開通の時期がずれたり、開通しない年もありますので、開通情報は細かく確認しておく必要があります。

水平歩道沿いの唯一の山小屋である阿曽原温泉小屋のスタッフの方々が、毎年登山道の整備をされHPで、整備の状況や、開通情報を細かくアップされています。阿曽原温泉小屋のHPの登山情報をチェックしてみてください。

阿曽原温泉小屋HP

黒部水平歩道の登山時の服装は?

水平歩道を登る際には、きちんとした登山スタイルがいちばんのベストです。
特に、水平歩道の場合は、岩壁をくり抜いた道を歩くため、天井の高さが低い道があったり途中で落石などの危険が伴うので、ヘルメットの着用は必須です。

また、道幅が狭く、すぐ下は断崖絶壁ですので、バランスを崩したり、つまずいたりすることも避けたいので、登山ストックはリュックの中にしまい、両手を開けて歩きましょう。
ストック以外のマットなどの装備物、キーホルダー、カップなども、なるべくリュック内に収めていたほうが安全です。岩に装備をぶつけてバランスを崩してします恐れがあります。

また、途中、長さ150mほどの真っ暗なトンネル(志合谷トンネル)があるため、ヘッドランプや懐中電灯などの照明も必須です。予備の乾電池まで用意しておくと安心です。

黒部水平歩道の登山にかかる時間や難易度と注意点

水平歩道は、中級者向けのコース。歩くスピードなどで違ってきますが、行き6時間、帰り5時間、合計11時間くらいかかります。速度が速ければ、片道4時間ちょとでも可能です。

登り始めの急な坂と、阿曽原温泉小屋近くのアップダウンが少しきついですが、あとは、その名の通りの水平歩道ですので体力的には楽ですが、丸太でつくられた道や、幅の細い道、崩れかかっている道など、途中で危険な箇所も見受けられます。
体力以上に緊張感と集中が必要です。初心者の方は、登山に慣れた方などと一緒に登ることをおすすめします。

登山者とのすれ違いに注意が必要

道幅が細いため、対向からくる登山者とのすれ違いには注意が必要です。道を譲る時は、かならず岩肌の方によるか、細い道の場合は、広さのある道まで戻るなど、お互いの安全のために、譲り合いをしましょう。

黒部水平歩道の登山口までのアクセスとトイレ情報

水平歩道の登山口は黒部渓谷トロッコ列車の終点欅平駅にあります。
JR新幹線の黒部宇奈月駅から、徒歩1分のところに富山地方鉄道「新黒部駅」があります。そこから、電車に乗って約25分、「宇奈月温泉」駅でおります。温泉街のお土産屋さんなどを楽しみながら、徒歩約5分に黒部峡谷トロッコ列車の「宇奈月」駅へ着きます。「宇奈月」駅には約350台収容の有料の駐車場がありますので、車の方も安心ですね。

トロッコ列車にのって約1時間20分。欅平駅が終点になります。トロッコ列車は、多くの観光客も利用される観光列車で、黒部渓谷の絶景が次々と楽しめる車窓と、富山県出身で女優の室井滋さんのアナウンスを楽しめます。宇奈月駅から欅平駅まで、大人片道1980円。

トイレ情報

トイレですが、水平歩道の登山の場合、欅平駅が最終のトイレポイントです。
駅構内のトイレでスッキリしてからスタートしましょう。今回のルートの場合は、途中のトイレがないので要注意です。

黒部水平歩道の登山ルートを解説

(欅平〜水平歩道始点〜水平歩道始点〜志合谷〜折尾谷〜阿曽原温泉小屋)

欅平〜水平歩道始点

登山口は、黒部峡谷鉄道、黒部トロッコ列車の欅平駅の駅前広場、ビジターセンター横にあります。石段からのスタートで、しじみ坂を登ってパノラマ広場へ。ここから標高差350mを一気に登るので、急勾配がしばらく続きます。暑い日は汗だくになりますので、十分水分補給をしながら、心が折れないように頑張りましょう。

パノラマ広場までは観光客の方も上り下りされるので、金属製の階段が設置されたりと十分に整備がされているので登りやすくなっています。天気のいい日は、パノラマ広場から唐松岳から不帰キレット、天狗ノ頭がよく見えますよ。

パノラマ広場から、さらに、さらに登ると鉄塔が見えてきます。鉄塔まできたら急坂は終わりです。そしてここからが水平歩道の始点となり、いよいよ水平歩道に突入です!

水平歩道始点〜志合谷

いざ、水平歩道を進みます。どこが断崖絶壁かな?といった感じの道から、丸太の桟道や、ワイヤーの番線の手すりの整備がみられ、左手には堂々とそびえ立つ、奥鐘山の岩壁を見ながら進みます。奥鐘山は、クライミングの名所として有名で、難易度が高く、「黒部の怪人」とも呼ばれているそうです。

更に進むと、ヘッドライトがいらない程度の短いトンネルがあったり、対岸に岩壁を削った道が見えてきたりと、水平歩道ならではの景観が出迎えてくれます。景色に見とれてバランスなどを崩さないように、番線を頼りに歩きましょう。

志合谷〜大太鼓

志合谷トンネルの入り口が見えてきます。ここは、約150mの半円を描くトンネルで中は真っ暗なので、ヘッドランプ、または懐中電灯を用意します。また、トンネル内は水浸しのところもあるので、足回りの防水対策も。

トンネル内は、天井が低くて曲がっているところもあるので、トンネルの壁や天井にもライトを当てながら、頭を打たないように歩きます。

トンネルを過ぎて30分弱、水平歩道を象徴する、大太鼓が見えてきます。岩がコの時にくり抜かれ、下は深い渓谷。絶好の撮影ポイントで、インスタ映えも間違いなしのスポットです。

折尾ノ大滝〜阿曽原温泉小屋

大太鼓からはほぼ水平な道が続き、歩きやすい道が続きます。そして1時間ちょっとあるくと折尾ノ大滝に到着。緊張感の続く水平歩道の中でも、オアシス的なスポットで、ここでお昼休憩を取る登山者も多いです。ここで水の補給もできますよ。

折尾ノ大滝からは樹林帯に入り、阿曽原温泉小屋が見えてきます。見えてきてからがちょっと長く感じますが、100mほどの急な下りを頑張ると阿曽原温泉小屋に到着します!お疲れ様でした。

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唯一の山小屋 阿曽原温泉小屋

水平歩道と下ノ廊下を通して唯一の山小屋である阿曽原温泉小屋は、ホウ雪崩による倒壊の恐れがあるので、プレハブ造りの仮設です。毎年、初夏に組み立てられ、秋の営業終了後には解体されます。山小屋の定員は50名。小屋の下には平地があり、ここが30張のテントが設置できるキャンプ指定地です。小屋にもテント場にも水洗トイレと水場があるのもうれしいですね。

期間限定の登山道にあり、山小屋の営業も期間限定なので、シーズンにはとても混雑してしまいます。宿泊の方は、山小屋の情報をチェックしつながら、確実に予約をすること。テントの方は、早めの出発、早めの到着で確実にテント場のを確保することが必要ですね。

冬は毎年解体して片付けられます。
屋根は、乾燥室兼荷物置き場に、壁と床パネルは縁の下に、柱や合掌は更地に綺麗に積み上げておきます。

水平歩道周辺の温泉

登山の後の楽しみといえば、やっぱり温泉です。
水平歩道でオススメの温泉をご紹介します。

秘境の温泉、阿曽原温泉(あぞはらおんせん)

阿曽原温泉小屋が運営している、阿曽原温泉。高熱隧道からのお湯が楽しめます。
山小屋から約10分ほど下ったところにあり、明かりも、囲いも、脱衣所などもない、野趣あふれる露天風呂です。
山小屋の宿泊者は無料で入れます。テント泊の方は、テン場使用料とは別に入湯料が700円が必要です。
また、温泉は1つなので、1時間ごとに、男性、女性が交代で入るようになっています。時間配分は、山小屋の受付近くに掲示されています。
阿曽原温泉小屋HP

河原からも温泉が湧きだす!祖母谷温泉(ばばだにおんせん)

泉質は単純硫黄泉の祖母谷温泉
欅平駅から歩いて約1時間、2.5kmにある、山小屋祖母谷温泉に露天風呂があります。登山客の間では、疲れがとれる温泉と、人気の温泉です。
宿泊もできるので、水平歩道の帰りに、祖母谷温泉で一泊して、疲れをとって帰る人も多く、リピーターの多い山小屋です。日帰りの場合は、露天風呂のみ入れますが、宿泊の場合は、内湯もあります。
大人600円、子供300円。紅葉のシーズンには、見事な紅葉も楽しめます。
祖母谷温泉HP