下ノ廊下(旧日電歩道)は、富山県黒部市、黒部渓谷にある仙人谷ダムから中新川郡立山町の黒部ダムまでの黒部川上流沿いのおよそ16.6 km ある歩道です。

一年間でおよそ2ヶ月ほどしか開通しない、期間限定の秘境トレッキングとして年々人気の登山道です。今回は、黒部ダム〜阿曽原温泉小屋のルートを中心に、ルートの難易度やコースタイムなどをご紹介いたします。

黒部渓谷下ノ廊下ってどんなとこ?

富山県の黒部渓谷の核心部にある「下の廊下」は、勾配が急で水量も豊富な黒部川の電力開発を目的に、調査や資材運搬のために日本電力がつくった歩道で、別名旧日電歩道とも呼ばれています。

中新川郡立山町の黒部ダムから仙人谷ダムまでを下ノ廊下といい、仙人谷ダムからは欅平まで続く水平歩道と連結しています。標高1000mの岩壁をほぼ水平にコの字に削られて作られた道は狭いところで60cmしかありません。それに加えて、雪渓を超えたり、ロープで岩肌を登ったり、丸太の梯子を渡ったりと、スリリングな道の連続です。

滑落事故が発生する危険地帯

危険をともなうスリリングなトレッキングコースとして有名で、毎年滑落事故が発生しいます。水平歩道も同じく、岩壁を水平にコの字に削られた道ですが、下ノ廊下の方が、よりワイルドで緊張感が続く道のりです。

スポンサーリンク

黒部渓谷下ノ廊下の開通の時期はいつ頃?

下ノ廊下は、毎年、9月上旬ごろから10月下旬までの、約2ヶ月しか開通しない、期間限定の登山道です。
豪雪地帯である黒部渓谷。毎年、残雪が消えてから下ノ廊下の整備が開始されます。

残雪の状況や、崩落などのダメージの程度によって、整備に時間がかかってしまうと、開通の時期がずれたり、開通しない年もあります。開通情報は細かく確認しておく必要があります。

下ノ廊下と水平歩道の中継地点に位置する阿曽原温泉小屋のスタッフの方々が、毎年登山道の整備をされていて、HPにて整備の状況や開通情報を細かくアップされています。阿曽原温泉小屋のHPの登山情報をチェックしてみてください。

阿曽原温泉小屋

下ノ廊下登山のおすすめは紅葉時期

下ノ廊下が通れる期間は限られていますが、中でもオススメの時期は、紅葉が美しい10月中旬ごろです。紅葉の色の鮮やかさは、その年の気候によって違いますが、黒部峡谷の山々が赤や黄色に染まった姿とエメラルドグリーンの黒部川のコントラストは、言葉には表せないほどの感動があります。

黒部渓谷下ノ廊下の難易度


下ノ廊下は、水平歩道よりも危険が伴うため、上級者向けのコースといっても過言ではないでしょう。
アップダウンはさほどありませんが、約16.6 km(阿曽原温泉小屋まで約18km)と、とにかく長い道のりの健脚コースです。

歩くスピードで違ってきますが、阿曽原温泉小屋までは、およそ7〜9時間程かかります。
下ノ廊下をはじめて歩く際は、断崖絶壁の絶景と、景勝地に目を奪われ、写真をとったり休憩したりと途中で時間をかけてしまいがちです。
ですが、ちょっとでも足を踏み外すと危険な道が続きますので日が暮れないうちに阿曽原温泉尾小屋に辿り着かなければなりません。渓谷の日照時間は短いので、いつもよりスピードアップを心がけていきましょう。

下ノ廊下登山の服装の注意点

下ノ廊下は、はじめと終わりの上り下り以外は平坦な道ですが、断崖絶壁の道や、丸太の梯子、滝のように水が流れている道、雪渓など、とてもワイルドな道が続きます。ですので、開通する期間の初夏〜秋口にあったしっかりとした登山スタイルでないと、危険です。

また、岩壁をくり抜いた道では、頭が天井もあたってしまう恐れもあり、落石の可能性も。ヘルメットはぜひ、着用して登りましょう。ダブルストックも厳禁。幅の狭い道で、ストックが木や道に引っかかってバランスを崩してしまったら、滑落してしまいます。できれば、両手を開けておき、ワイヤーの番線をしっかり持ちながら進むことをオススメします。

ストックとおなじく、リュックの外にでているマットやキーホルダー、カップなどもなるべくリュックの中にしまっておきましょう。また、長い道のりですので、出発が早く、日がまだ登っていない時もあるので、ヘッドランプも必須。予備の乾電池まで用意しておくと安心ですね。
残雪も多く雪渓を歩く場合もありますので、アイゼンの携帯もオススメします。

スポンサーリンク

黒部渓谷下ノ廊下の登山口までのアクセス・トイレ情報

今回の下ノ廊下の登山口は、黒部ダムをスタートとします。黒部ダムまでは、長野県の松本駅からJR在来線で信濃大町駅に移動します。その後は、信濃大町駅~扇沢(北アルプス交通(アルピコ交通との共同運行)扇沢行きバス 片道1,360円)、扇沢~黒部ダム(立山黒部アルペンルート・トロリーバス 片道1,540円)と乗り継いで、黒部ダムへ到着です。

遠方からの場合は、黒部ダムから徒歩30分ほどにある、ロッジくろよんに前日から宿泊し、朝早くに登山をスタートする方も多いです。シーズン時には、宿泊が満員になることもありますので、早めの予約が必要です。

黒部ダムへ到着したら、日電歩道・内蔵助谷方面への案内を目印に進みます。登山者出口の標識から左へ入ると、登山者出口の通路に出ます。通路の右側にトイレがありますので、ここでスッキリしてからスタートです。ここから阿曽原温泉小屋まではトイレはありません。

黒部渓谷下ノ廊下の登山ルートを解説

(黒部ダム〜白竜峡〜十字峡〜半月峡〜S字峡〜仙人谷ダム〜阿曽原温泉小屋)

黒部ダム〜白竜峡〜十字峡

登山口から右に進むと、旧日電歩道の登山道にでます。いきなり、急な下り道を下りていくと橋が見え、そこには黒部ダムの堂々とした堰堤の姿があります。

黒部ダムを上から見ることはありますが、下から仰ぎ見る機会はなかなかありません。黒部ダムが遠くから、いってらっしゃいと見送ってくれているかのようで、気分も上がります。

しばらくは歩きやすい道が続きますが、徐々に岩がゴロゴロの道となり、岩盤を削った道、迂回のための直角の木の梯子、雪渓越えなど、無理やり?作ったワイルドな道が次々と現れ、まるで障害物競争のようです。ワクワクしますが、緊張感も忘れずに。

下の廊下の景勝地その1、白竜峡が見えてきます。黒部川の水量が多くなり、険しい渓谷とエメラルドグリーンの川が生み出す、ワイルドの景色を眼下に、岩壁の道をワイルドに進みます。

白竜峡を後におよそ2時間弱ほど進むと、下ノ廊下を代表する景勝地「十字峡」姿を見せます。二つの沢(劔沢と棒小屋沢)が黒部川の本流に十字に流れ込む地形で3つの川がこうして合流しているのはとても珍しいそうです。ここで休憩を取る方は多いのでゆっくりしたいところですが、この風景はしっかりと目に焼き付けて、先へ急ぎます。つり橋を渡り、登山道へ進みます。

十字峡〜半月峡〜S字峡

十字峡からは、岩盤をくり抜いた危険な道が、更に高度をあげて続きます。ですが、整備もされているので、一歩一歩慎重に歩いていけば、歩きやすい道です。そこから、半月峡、S字峡と、次々と美しい絶景が楽しめます。

S字峡〜送電線〜仙人ダム

S字峡をすぎると、関西電力の送電線が突如としてあらわれます。映画にでてくる秘密基地のようです。”クロヨン”の愛称で親しまれている黒部川第四発電所は、自然環境を守るために送電線の下にあります。黒部ダムの水から生まれた電気がここで作られていることを思うと、感慨深いですね。送電線が見えてくると、仙人ダムもすぐそこです。東谷吊橋を渡って、仙人ダムに入ります。

仙人谷ダム〜阿曽原温泉小屋

仙人ダムに到着です。厳密にいうと、ここまでが下ノ廊下(1929年に開通した旧日電歩道)となり、仙人ダムから欅平までが水平歩道(1920年に開通)です。

仙人ダムの敷地内にある、人工のトンネルをぬけ車道を歩いて行くと、エメラルドグリーンのダム湖が美しい、仙人ダムが見えてきます。ここから、なんと、仙人ダムの施設内を通り抜けるという、他では味わえないルートに入ります。

施設の入り口の扉をあけて「失礼いたします」といいながら入ると、薄暗い通路が続きます。登山者用の案内標識も要所要所に設置されているので、それにしたがって、進めば迷うことはありません。

途中、サウナのような暖かさの高熱隧道を通り、鉄作のような扉から施設を出ると、関西電力の従業員の宿舎である人見平宿舎へ。もうすぐ阿曽原温泉小屋と気持ちも少しあがりますが、ここからが勝負所です。

急登を登り返し、そして一気に下るという、歩き疲れてクタクタの体にはとても厳しい最後の道。心が折れそうになりますが、温泉とビールを思いながら、頑張りましょう。

水平歩道(黒部)すれ違いが困難なヘルメット必須なルートを紹介!温泉情報も。

下ノ廊下と水平歩道をつなぐ阿曽原温泉小屋

阿曽原温泉小屋は、下ノ廊下と水平歩道の中継地点にある山小屋です。

黒部ダム〜下ノ廊下〜阿曽原温泉小屋(一泊)〜水平歩道〜欅平という一連のコース、または、阿曽原温泉小屋で一泊してピストンコースのどちらかが考えられますが、どちらも必ず阿曽原温泉小屋がポイントとなる、重要な山小屋です。

山小屋の定員は50名。テン場は30張のテントが設置可能。小屋にもテント場にも水洗トイレと水場があります。

シーズン中は、山小屋もテントもいっぱいになりますので、山小屋利用の方は、開通の情報を見ながら早めの予約を。テント泊の方は早めに山小屋へ到着し、場所を確保することをオススメします。

山小屋泊の方は、夜はおかわり自由の名物カレーが味わえます。また、宿泊客が少ない時には、水平歩道や下ノ廊下、黒部渓谷のDVDを見せてもらえたりして、他の登山者と楽しい夜が過ごせます。ビールも販売!

下ノ廊下のゴールのご褒美は、秘境の温泉、阿曽原温泉!

下ノ廊下の中継地点である阿曽原温泉は、下ノ廊下にも勝るとも劣らないほど、ワイルドな露天風呂です。
小説「高熱隧道」にあるように、まさに!高熱隧道から引いたお湯なのです。場所は阿曽原温泉小屋のテント場の下、徒歩約10分ほど下ったところにあります。

山小屋の宿泊者は無料。テント泊の方は、テン場使用料と別に入湯料700円です。露天風呂1つなので、1時間ごとに、男性、女性が交代で入ります。明かりも、囲いも、脱衣所などもない、野趣あふれる露天風呂は、開放感たっぷり、下ノ廊下を踏破した人だけのご褒美です。

阿曽原温泉小屋

スポンサーリンク