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祖母山の難易度低めのおすすめ登山ルートをご紹介!登山口・アクセス情報も解説!

祖母山は九州山地の中央部、秘境ともいえる場所にあります。日本百名山のひとつで、九州の山岳の中でも祖母山は難易度が高い山と言われている山です。本記事では、祖母山の情報や、難易度低めの登山ルートや、最適な服装、登山口などをご紹介します。

祖母山は九州の秘境

祖母山は、大分県と宮崎県の県境にまたがる標高1756mの九州山地の山で、日本百名山に選ばれている名山です。標高としては九州本島で6番目、上5つはくじゅう連山にあるので、くじゅう連山を一つの山として見るならば、2番目の山ともいえます。

断崖絶壁を進む上級者向け登山ルートから、整備された一般登山者向けルートまで、バリエーション豊かな登山ルートがあり、火山ではない自然豊かな山深い登山が楽しめます。

九州山地の中央部、都市から離れた内陸部にあるため、各登山口への交通の便が悪く、公共交通機関でのアプローチは困難で、車を利用する登山者がほとんどです。車でも福岡市からは3時間以上かかり、登山道もあまり整備されていないため、秘境と言われる所以です。

祖母山は自然豊か

祖母山は、くじゅう連山や阿蘇とは違い活火山ではありません。したがって、火山特有の荒涼とした風景は無く植生が豊かです。また、くじゅうや阿蘇とは違い、観光地化されていないため観光開発もされておらず手付かずの自然が残っています。

1000m以上ではブナ、ツガなどの原生林に覆われ、山麓には照葉樹林帯、山腹ではマツなど針葉樹が見られます。その豊富な植生のため、秋の紅葉が素晴らしく、紅葉目的の登山客も多く訪れます。花はシャクナゲ、ミヤマキリシマ、大山レンゲなどが有名です。

祖母山の動物たち クマの目撃例も

祖母山周辺は、九州の中でも野生動物が多い場所としても有名で、ヤマネやニホンジカ、九州では珍しくなったニホンカモシカも生息しています。

九州では絶滅したといわれるツキノワグマですが、祖母山周辺では目撃例が絶えません。専門家によれば、別の動物の見間違えということになっていますが、いまだに、うわさが絶えません。登山者の中には用心してクマ鈴をつけている方もいます。絶滅したクマがいてもおかしくないと思わせる祖母山。やはり、九州の秘境です。

祖母山の4つの登山口・アクセス情報

祖母山の登山口は4つです。それぞれの登山口から、様々な難易度の登山ルートが祖母山山頂まで伸びています。この4つの登山口の情報をご紹介します。

祖母山 尾平登山口

所在地:宮崎県西臼杵郡 高千穂町

大分県竹田市より、県道8号線、県道410号線、県道7号線をしばらく進み約1時間で登山口駐車場へ到着します。この駐車場は、すぐ近くの「もみ志や旅館」が管理しており駐車料金500円でトイレ完備です。登山口は駐車場から3分ほどです。

尾平登山口からは祖母山頂まで最短で4時間程度で、途中分岐が多く、様々なルートをとれますのでベテランには人気ですが、初心者にはわかりにくく、おすすめできません。

祖母山 北谷登山口

所在地;宮崎県西臼杵郡高千穂町五ケ所

宮崎県側の国道325号線より、県道8号線、五ヶ所トンネルを抜け、旧五ヶ所小学校を右折すると、林道に入り、しばらくすると未舗装の砂利道になります。20分程度の未舗装の悪路を進むと登山口駐車場へ到着します。非常に悪路なので車高が低い車は気を付けましょう。10台程度駐車できトイレもあります。

北谷登山口からは、風穴ルートと千間平ルートがあります。風穴ルートは、鎖やはしごが多く初心者には不向きです。千間平ルートは山頂まで2時間30分で祖母山の登山ルートとしては最短です。

祖母山 神原一合目ノ滝登山口

所在地:大分県竹田市神原

大分県竹田市より、県道8号線、県道639号線を進み、途中登山口への林道へ左折します。20分ほど林道を進み、竹田市より50分程度で登山口駐車場へ到着します。この駐車場は無料で20台程度停められますが、紅葉シーズンなどは6時頃には満車になります。トイレ完備です。

神原一合目ノ滝登山口からは、神原ルートを使用して山頂まで3時間30分です。

祖母山 白水登山口

所在地;大分県竹田市神原

大分県竹田市より県道8号線、穴森神社を目印に進みます。しばらく進むと白水橋を渡り祖母山の案内看板が見えると登山口ですが、林道が荒れており、行けるところまで進み路肩へ駐車し登山口まで1時間程度歩くことになります。

白水登山口からはメンノツラルートという尾根歩きになり、山頂まで2時間30分程度です。林道歩きも含めると3時間30分程度になります。

祖母山登山の見どころ

祖母山の魅力は、九州山地に囲まれた山深さと豊富な自然です。春は「アケボノツツジ」や「ミツバツツジ」「シャクナゲ」などの鮮やかな花々、夏はブナやカエデなどの広葉樹林の澄み切った緑、秋は見事な紅葉、冬は雪と霧氷の世界など四季折々の美しい姿が見られます。

また、九州の中央部にそびえる祖母山からは、北西方向にはくじゅう連山や阿蘇、南方向には長く連なる九州山地の山並みなど、多くの山を見ることができます。

祖母山難易度低めのおすすめ登山ルート

ほとんどの登山ルートで行程が長く、あまり整備されていない祖母山ですが、その中でも、初心者も登山できそうなルートがひとつ千間平(せんげんだいら)ルート、神原(こうばる)ルートです。これらのルートは案内標識などよく設置されており、総じてよく整備されています。

【登山する上での注意点】
祖母山登山ルートの中では、難易度が低い登山ルートということでご紹介しますが、他の山の初心者向けルートに比べれば難易度が高くなっています。できれば経験者との同行をおすすめします。

祖母山千間平(せんげんだいら)ルート

千間平(せんげんだいら)ルートは、標高差620m。登り2時間30分、下り1時間50分、総行程5時間(休憩時間含む)です。風穴ルートを組み合わせれば周遊できますが、難易度が高いので今回は使いません。

1. 登山口から国観峠(所要時間1時間50分)
標高1122mの登山口駐車場より登山届を書き出発します。途中山頂下の9合目小屋までトイレはありませんので、済ましておきましょう。まず、千間平に1時間で到着します。広い場所なので、ここで休憩します。5分ほど休憩したら、国観峠を目指します。樹林帯をどんどん登り、千間平から約50分で国観峠へ到着します。この後は山頂へ一気に登りますので、一旦休息をとりましょう。

POINT

国観峠は広く休憩や食事などに便利です。ただし、標高1490mで気温が低く、ここまで急坂を登ってきて汗をかいているため、体が汗冷えしてしまいます。一旦冷えた体はなかなか暖かくならないので、冷やさないことが大切です。夏場はウィンドブレーカー、寒い時期は携帯ダウンなどをすぐに羽織りましょう。寒さを感じる前に着用するのがコツです。

2. 国観峠から山頂(所要時間40分)
国観峠からは再び木々の中、急坂が続きます。ロープがある、大きな岩を乗り越えるような場所もあるので滑らないように慎重に登ります。国観峠から1時間で山頂に到着です。標高1756.4mの祖母山山頂からは、遠くにくじゅう連山、近くに傾山、古祖母山などを望むことができます。

POINT

祖母山頂直下には、九合目小屋があります。ここは2018年4月まで、管理人さんが常駐しており、宿泊2000円でしたが、現在は無料の避難小屋になっています。トイレもあり、天候が悪い場合や寒い場合の休憩に利用できます。もし、悪天候で下山が心配されるときは、無理をせずにここに宿泊しましょう。

3. 下山(所要時間1時間50分)
風穴ルートから下山することもできますが、鎖やはしごなど難易度が高いので、往路をそのまま下ります。

POINT

もし、風穴ルートも使用して周遊したい場合は、登りに風穴ルートを使いましょう。鎖場やはしごなど険しい登りは、下りに使うと危険です。風穴ルートで登り、千間平ルートで減算することをおすすめします。

祖母山神原(こうばる)ルート

神原(こうばる)ルートは、標高差1100m、登り3時間30分、下り3時間、総行程7時間(休憩時間含む)です。それなりの体力が必要ですが、登山道は比較的整備されており、危険な箇所も少ないルートです。

1. 神原一合目ノ滝登山口から五合目小屋(所要時間30分)
神原一合目ノ滝登山口駐車場でトイレを済ませ、登山届を書いて出発です。標高690mの登山口から少しずつ標高を上げながら森の中を進み、五合目小屋へ到着します。五合目小屋は現在、避難小屋として使用されており、トイレも設置されています。

POINT

名前は五合目ですが、ここは標高864m。まだ200m程度しか登っていません。山頂まであと標高差900m、3時間はかかります。まだまだ序盤ですので服や装備を整えたら休憩せずに進みましょう。

2. 五合目小屋から国観峠(所要時間120分)
五合目小屋からは登りが急になります。丸太の階段や、岩場、えぐれた登山道などが続きます。ずっと樹林帯ですので展望は望めませんが、夏の陽射しを避けることができます。このあたりの森は、夏は広葉樹の緑、秋は紅葉になりきつい登りを癒してくれます。ひたすら2時間、国観峠を目指して登り続けましょう。途中、滝などがありますので、適宜、休憩を取るようにしてください。

標高1486mの国観峠へ到着すると、急にあたりが開け、目の前に目指す祖母山頂が見えてきます。これまでの登山道は、樹木が生い茂り、うっそうとしていましたが、この国観峠は不思議なくらい広く開けており、別世界に来たような錯覚に陥ります。山頂まであと1時間、ここで一旦休憩し、山頂を目指しましょう。このあたりで昼食をとってもいいでしょう。

POINT

長時間の登りにはトレッキングポールが有効です。トレッキングポールを使えば、上半身も一緒に使いながら登りますので、下半身に疲れが集中することがありません。また、トレッキングポールを使用するときは必ず2本で、登山道保護・植生保護のため先端のキャップを付けて使用するようにしましょう。

3. 国観峠から山頂(所要時間1時間)
ここは、前述した千間平ルートと同じです。

4. 下山(所要時間3時間)
往路をそのまま戻ります。登りでかなり体力を消費しているでしょうから、下りはバランスを崩さないように慎重に下りましょう。途中、滑りやすいところがあり、特に雨の後などは危険です。

POINT

祖母山含め九州の山全体に言えることですが、関東の山のように整備がされていません。標識なども少なく、道迷いしやすくなっています。分岐ポイントやわかりにくい場所には必ず、テープやケルンなどがありますので、必ず確認しながら進むようにしましょう。「多分、こっちだろう」という推測で進むと道迷いの元です。地図やコンパスも確認しながら、進む方向にテープなど目印が無い場合は、進まないようにしましょう。

祖母山登山におすすめの服装

祖母山登山は、行動時間が長くどんな状況でもこなせる準備が必要です。春夏秋の3シーズンは一般的な登山ウェアで十分ですが、厳冬期は30cm以上雪が積もることもあり万全の冬山装備が必要です。

1. インナーウェア
夏は吸湿速乾タイプのTシャツ、冬は長袖の保温性が高いインナーを着用しましょう。

2. ミドルウェア
夏でも標高が高く、あまり日差しも無いので半そでのシャツなどがおすすめです。冬はフリースやジャージなどを着用しましょう。

3. アウター
夏でも風が吹くと寒いのでウィンドブレーカーなどは必ず持参します。冬はレインウェアなどをアウターとし利用しましょう。寒い時期は休憩時の体の冷えを抑えるため、携帯タイプのダウンジャケットも持参しましょう。

4. ボトムス
夏はハーフパンツでもOKです。冬はかなり気温が低くなるので、ロングタイプを着用し、保温性のタイツを着用しましょう。

5. 帽子
祖母山の登山道はほとんどが樹林帯で陽射しは強くありません。日射対策としては帽子の必要はありませんが、頭部保護という意味では着用することをおすすめします。

祖母山は九州一遭難が多い山

祖母山は、九州で最も遭難や事故が多い山です。多くの登山ルートの行程が長く分岐が多いため道迷いが多いことと、険しい崖などでの滑落などが主な要因です。今回は紹介していませんが、尾平登山口からの黒金山尾根ルートは、往復9時間と長く、生い茂るスズタケのヤブ漕で体力を消耗する上、険しい崖の連続などで、祖母山の遭難者がトップのルートです。今後、初心者を卒業して中級上級のルートを歩く場合は、準備を万全にして臨むようにしましょう。

まとめ

祖母山の情報と、初心者向け登山ルートをご紹介しました。手付かずの自然や、観光地化していないことが祖母山の魅力です。その反面、登山口が遠く行きにくいことや、あまり整備されていない登山道など、初心者にはハードルが高い山でもあります。登山する場合は、地図でしっかりと登山ルートを把握し、時間経過を確認しながら、無理をしないようにしましょう。
安全に十分配慮して、ぜひ、祖母山登山に挑戦して、九州屈指の豊かな自然に触れてみてください。