大雪山 トムラウシ山・十勝岳・幌尻岳

大雪山|北海道民が登山初心者におすすめのコースを厳選!ベストシーズンもご紹介!

北海道のほぼ真ん中に位置する大雪山。日本百名山にもその名があり、一度は登ってみたいと思う登山者も多いのではないでしょうか。

そんな登山者憧れの大雪山は初心者やファミリーでも登れる山もあれば、経験者も楽しめる難易度の高い山も。今回は、初心者でも十分に大雪山の魅力を堪能できるコースを、北海道民の私がベストシーズンとともに紹介します。まずは一番いい時期に行って、大雪山登山の楽しみや素晴らしさも味わってもらえたらと思います。

大雪山の魅力

大雪山は標高がどのくらいで、そもそもどこにあるの? と疑問に思っている人も多いと思います。地図を見ても、「大雪山」という山はどこにも見当たりません。目に入るのは「大雪山国立公園」という文字だけ。

そう、大雪山はひとつの山ではなく、複数の山々を総称したものなのです(一つの山でないことを明確にするために、「大雪山系」という言葉が使われることもあります)。

大雪山は北海道の屋根

北海道の最高峰である旭岳(2,291m)や2番目に高い北鎮岳(2,244m)、3番目に高い山白雲岳(2,230m)は、すべて大雪山に含まれています。大雪山が「北海道の屋根」とも呼ばれる理由がおわかりいただけると思います。

登山経験者だと縦走も可能なので、一度に北海道の高い山々を制覇できるということも大雪山の人気の理由のひとつ。また、大雪山はとても広い山岳エリア。“山の中の山”を見られるのも特徴です。

高山植物の宝庫

北海道の先住民族、アイヌ民族は、大雪山を「カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)」と呼んでいました。高山植物が咲き乱れるシーズンの大雪山は、まさに神々が集うにふさわしい素晴らしさ。高山植物が見られる山は数多くありますが、違うのはなんといってもそのスケールの大きさ。高山植物のじゅうたんのような絶景が見られるのも、大雪山が「高山植物の宝庫」ともいわれる理由かもしれません。

高山植物の女王「コマクサ」や群落が見事な「チングルマ」が有名ですが、このほかにも大雪山だけに自生する固有種も見られます。大雪山固有種は、「ダイセツトリカブト」や「ホソバウルップソウ」、「クモイリンドウ」など現在11種発見されており、その貴重な姿を一目見ようと、多くの人が訪れます。

紅葉は大雪山から始まる

日本の紅葉前線は大雪山から始まると言われます。つまり、大雪山は日本一紅葉が早く見られるエリア。早いときは8月下旬あたりから紅葉が始まり、9月下旬には終わりを迎えます。9月下旬には早い冬の訪れを告げる初雪と重なり、紅葉と雪景色を一緒の風景が見られることも。

大雪山の紅葉が登山客を惹きこむ理由のひとつに、「色とりどりの紅葉」が挙げられます。大雪山の紅葉はナナカマドやハウチワカエデ、シラカバといった赤や黄色に葉の色を変える木々と緑のままのエゾマツやハイマツなどの常緑樹が混在しているのが特徴。緑が残ることにより、赤や黄色がより際立った紅葉が見られるのです。イメージする「赤一色の紅葉」とはまた違った自然の美を楽しむことができます。

夏の時期におすすめ大雪山のコースの特徴

北海道の夏は涼しいといっても、やっぱり夏はそれなりに暑いもの。山は下界に比べて数℃低いので、頂上ではその恩恵を受けて気持ち良い時間を過ごせます。

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夏の大雪山登山の醍醐味は、やはり高山植物。チングルマやシャクナゲなどの大群落はもちろん、可憐に咲くコマクサやツガザクラ、キンバイ、イワウメといった高山植物も目を楽しませてくれます。

北海道の最高峰!大雪山系旭岳(標高2,291m)

北海道の最高峰旭岳。北海道一の高さから見る360°のパノラマは格別です。旭岳は夏がベストシーズン!

旭岳ロープウェイで5合目へ

旭岳の5合目(標高1,600m)までロープウェイが運行されています。体力を温存しながら頂上を目指せるのは、初心者にとってもうれしいポイントですね。

旭岳登山で押さえておきたいポイント

姿見の池
旭岳に抱かれるように佇む池。風のない日は、この池の名前の由来ともなった水面に映る「逆さ旭岳」を臨めます。穏やかな姿見の池と今も噴煙を上げる躍動感あふれる旭岳とのコラボレーション、大地の静と動を同時に楽しめるスポットです。

姿見の池散策路
姿見の池を越えると、旭岳への道は溶岩でできた岩や砂利の道。高山植物を愛でるなら姿見の池までの散策路がポイント。だんだん近づいてくる旭岳にテンションも上がります。

旭岳登山の初心者におすすめコース

所要時間:5時間
ロープウェイ姿見駅―(20分)→姿見の池―(150分)→旭岳―(110分)→姿見の池―(20分)→ロープウェイ姿見駅

ロープウェイで5合目まで行き、そこから姿見の池を経由して旭岳山頂に向かうコース。姿見の池までは高山植物や紅葉を楽しみ、姿見の池以降はひたすら頂上を目指します。

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ロープウェイ姿見駅から姿見の池へ
10分間の空中の旅を楽しめば、そこは旭岳5合目。ロープウェイ山麓駅とはまた違った凛とした空気が今からの登山への気持ちを引き締めてくれます。

姿見の池に通じる散策路へ。途中、夫婦池や道中に咲く高山植物を眺めながら姿見の池を目指します。運が良ければ、シマリスが「行ってらっしゃい」と声をかけてくれるかもしれませんよ。

姿見の池から岩場へ
姿見の池を越えれば、散策路の続きと旭岳へ向かう登山等との分岐点が。目印は石造りの旭岳石室。ここからいよいよ火山らしいエリアに突入します。ゴツゴツとした岩肌を縫うようにひたすら登ります。

砂利道なので足元は決してよくありませんが、一気に高さを稼ぐことができます。たまに振り返ると、登ってきた高さに自分をほめたくなりますよ。自分を励ましながら登ること約2時間。唯一の目印「金庫岩」を見ると、もう9合目。

頂上は360°のパノラマ
金庫岩からは最後の試練。つづら折りの急登を終えると……ついに登頂!

山頂から眺める景色は雄大そのもの。間違いなく北海道の最高峰に立っている自分を実感できます。白雲岳やトムラウシ山などほかの大雪山の山々を眺めていると、いつかあそこにも!という気持ちが沸々と湧いてきますよ。

カムイミンタラの玄関口 大雪山系黒岳(標高1,984m)

神々が集う庭への入り口を実感できる黒岳山頂。スケールの大きい絶景に心奪われること間違いなし!
黒岳は夏がベストシーズン!

黒岳ロープウェイとリフトで7合目へ

黒岳の7合目(標高1,520m)までロープウェイとリフトを乗り継いで行くことができます。足元が開いているリフトからはチングルマやミヤマオダマキなどの高山植物が。あわせて眼前には近づいてくる黒岳。これからの登山のモチベーションアップに最適の15分となることでしょう。

黒岳登山で押さえておきたいポイント

色とりどりの高山植物
登山道で見られる高山植物は道中の疲れを吹っ飛ばしてくれるほど見事。色々な花を愛でられるので飽きないのも嬉しいポイント。チシマノキンバイソウやミヤマキンポウゲの黄色、エゾノハクサンイチゲやチングルマの白。エゾリンドウやミヤマオダマキなどの紫……。その中でも咲き乱れるウコンウツギは必見モノ。

黒岳登山の初心者におすすめコース

所要時間:2時間
リフト七合目駅―(70分)→黒岳山頂―(50分)→リフト七合目駅

5合目まではロープウェイで、そこからリフト乗り場までしばしの散策を楽しみます。リフトでは7合目まで行くことができ、黒岳ロッジで登山届を提出してから黒岳山頂を目指します。山行中は色とりどりの高山植物や紅葉を楽しみながらの登山です。

黒岳ロッジからまねき岩
ロッジに別れを告げたら、いよいよ本格的な登山道へ。一本道なので迷う心配はありません。ゴロゴロした岩を登っていくところもありますので、雨上がりなどは滑らないように気をつけて。

8合目と9合目にある標識で自分がどこまで登ってきたかが分かります。ベンチも設置されているので、向かいに見える山々を眺めながらしばしの休憩も可能。

見事な高山植物を眺めながら、一時間ほどの山行で見えてくるのが「まねき岩」。カムイミンタラへ招き入れてくれているようです。

カムイミンタラへの入り口へ
まねき岩を見れば、頂上はもう少し。最後は木々のトンネルをくぐりゴール!

開けた山頂からの景色に、大雪山のスケールの大きさを実感できます。遠くには北海道第二の秀峰「北鎮岳」の姿も。広々とした「庭」に神々が集っている姿を思い浮かべながら、しばし非日常の時間を楽しみましょう。

秋の時期におすすめコースの特徴

早く、そして短い北海道の秋を楽しむには紅葉が一番! 多彩な色が山肌を染めていくグラデーションは素晴らしく、圧巻のスケールで楽しめるのが大雪山の紅葉の特徴。赤だけでなく、黄、オレンジ、緑……色とりどりの紅葉を楽しめます。

大雪山の紅葉は、その年の状況にもよりますが、8月下旬から始まり、9月下旬には終わりを迎えます。なんせ広い大雪山ですから、ベストな紅葉シーズンはそれぞれの山域によって異なりますので、事前にホームページなどで紅葉の状況や見ごろをチェックしてから行くことをおすすめします。また、紅葉の時期は混雑したり、一般車両が通行止めになったりすることもありますのでご注意を。
※平成30年度の紅葉期マイカー規制について(北海道上川町ホームページより)
北海道上川町HP

沼に映る紅葉は絶景! 大雪山高原温泉沼めぐり

大小さまざまな大きさの沼に映る紅葉は日本一とも。幻想的な世界が見られます。

高原温泉沼めぐりが初心者におすすめの理由

大雪高原をめぐるので沼巡り中は、アップダウンはほとんどありません。スタート地点から分岐道までの道は多少のアップダウンはありますが、これから見ることになる絶景を思い浮かべながら歩きましょう。

高原温泉沼めぐり押さえておきたいポイント

沼巡りのあとは乳白色の温泉へ
高原温泉沼巡り、とその名がついた高原温泉が沼巡りのスタート地点。広々とした開放的な露天風呂もある情緒あふれた温泉。登山のあとの疲れを癒してくれることで人気があります。また、独特の硫黄の臭いは、大雪山が火山であることを思い出させてくれます。

大雪山高原温泉沼めぐりの初心者におすすめコース

所要時間:5時間
高原温泉ヒグマ情報センター―(30分)→分岐―(35分)→土俵沼―(15分)→滝見沼・緑沼―(25分)→えぞ沼―(20分)→式部沼・大学沼―(10分)→高原沼―(20分)→空沼―(145分)→高原温泉ヒグマ情報センター

以前は、空沼以降も進んで一周して分岐に合流することもできたのですが、平成28年の台風被害により通行止めになっています。現時点では空沼で引き返すことになります。行きと帰りで、また違った絶景が見られるかもしれないとプラス思考で戻りましょう。

ヒグマ情報センターでレクチャーを受けて出発
高原温泉沼巡りをする前に、必ず受けるのがヒグマ情報センターでの15分ほどのレクチャー。毎日監視しているヒグマの情報を発信してくれます。そう、ここはヒグマが生息する山。気を引き締めて出発です。

最初の沼「土俵沼」を目指す
最初の沼、土俵沼までは木の根が露出した道やカエデのトンネル、ミズゴケの映える幻想的な風景を楽しみながら歩いていきましょう。途中、噴煙をあげる場所も。大地の躍動を感じながら歩いていくと、森を抜けて視界が広がります。

紅葉の別天地
最初の沼「土俵沼」に着けば、沼を囲む紅葉にうっとり。さあ、ここだけで満足してはいけません。紅葉と沼の紅葉劇場は始まったばかり。

息をのむような鮮やかな紅葉に足も進みます。

山を背にした紅葉もいいものです。

沼がある湿地帯を歩くので、雨の日の後などはぬかるみがあることも。底の厚い長靴など足元がしっかりした状態で。
下山後は、高原温泉の硫黄の湯で疲れを癒してリラックスしましょう。

日本一の紅葉を眺める 大雪山系赤岳(標高2,078m)

高原沼とともに北海道の紅葉のベストスポットとして有名な赤岳。特に、銀泉台からの紅葉は圧巻。

赤岳が初心者におすすめの理由

急登はいくつかありますが、それぞれの登りのポイント間は比較的平らな道を歩いていきます。それぞれにお花畑が広がっていて、夏は高山植物、秋は高山植物の葉が赤く染まった草紅葉も楽しめます。
車で標高1,500mまで行くことができるのも、初心者にはうれしいポイントですね。

赤岳登山で押さえておきたいポイント

銀泉台からの紅葉
銀泉台からの紅葉は、一生に一度は眺めておきたいほどの絶景! 斜面に広がる赤や黄色、オレンジ、そして緑のコンビネーションにため息さえついてしまうほど。赤岳登山のスタートは、しばらくこの絶景を眺めながら。なんとも贅沢な登山です。

お花畑の草紅葉
紅葉はナナカマドなどの木だけではありません。赤岳は草紅葉も見事。ウラシマツツジやクロマメノキなどの高山植物の葉が赤くなります。特に、チングルマの草紅葉は必見。葉の赤に綿毛も入り、ちょっぴりさみしい雰囲気が秋の終わりを知らせてくれるようです。

赤岳登山で初心者におすすめコース

所要時間:5時間50分
赤岳登山口―(60分)→第一花園―(50分)→駒草平―(30分)→第三雪渓―(50分)→赤岳―(160分)→赤岳登山口

銀泉台まではジグザグのダート。運転にはくれぐれも気をつけて。銀泉台の駐車場は紅葉の時期はすぐに埋まってしまうので、確実に停めたいなら早めの行動を。紅葉時は登山スタートからいきなりの絶景。これからの登山を応援してくれているかのようです。

銀泉台から第一花園へ
銀泉台から登山道に入れば、いよいよ登山開始。途中には山の斜面を眺められるスポットがあります。夏はまぶしいほどの緑、秋は色とりどりの紅葉を見ながらの山行となります。

第二花園、駒草平を通って
シーズン初めはまだ残雪の上を歩くことになる第二花園。そして名前のとおり、高山植物の女王「コマクサ」があちらこちらにひっそりと咲いている駒草平。ここまではそれほどきつい場所もなく、高山植物や紅葉を楽しみながら進んでいきます。

赤岳までの試練、第三雪渓を越えて頂上へ
赤岳最大の試練という人も多い第三雪渓。見上げるほどの急登がしばらく続きます。この第三雪渓を越えれば、またお花畑が。
そして、第四雪渓を越えれば、ついに登頂です!

頂上は大きな岩がゴロゴロした荒涼とした雰囲気ですが、意外に開放的。火口をのぞいたり、北海道の最高峰「旭岳」を遠くに眺めたり……。大雪山のスケールの大きさを感じることができるのも魅力です。

大雪山の魅力を味わおう!

北海道の先住民であるアイヌ民族は、大雪山を「カムイミンタラ」と呼んでいました。それだけ近づきがたい山だったのでしょうか。今は、かつてよりも確実に身近になった大雪山。
それぞれの山にそれぞれの魅力。一度行くとほかの山にも行きたくなるくらいの絶景も待っています。ぜひ一度足を運んで、その魅力に触れてみてくださいね。

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