沢の水を飲む事に潜む危険や
どうしたらより安全に沢の水を飲む事ができるかについて
ご紹介したいと思います。
沢の水の飲み方について
喉が渇いて乾いて仕方ない時、皆さんが欲するのはコーラでしょうか?
ビールでしょうか?
きっと頭の中で様々な飲み物を思い浮かべられたのではないかと思いますが、運動して汗をかいている時ならば、水がとても美味しく感じられるのではないでしょうか。
それが、大自然の中であれば尚更です。
重いザックを背負い、山の中をひたすら歩く登山ではとにかく喉が渇きます。
もちろん、ほとんどの方々は十分な量の水分を持って山を歩かれると思いますが、山の中を流れる清流や小さな滝を見た時、その水を飲んでみたくなりませんか?
中には、今まで何も気にせずに沢の水を飲んでいた方もいらっしゃるかもしれません。
沢の水は安全か?
大自然の中を流れる清流の水は、とても綺麗に見えます。
危険どころか、飲んだら健康になりそうな気すらします。
もちろん、沢の水は、都会を流れる川の水とは比べものにならないくらい澄んでいるのですが、飲んでも大丈夫なのでしょうか?
日本の多くの場所で水道水を飲んでも問題が無いのは、水が専用の水道管を通り、水質がしっかりと管理されているからです。
確かに、沢の水の中にも「名水」と言われ、有名なものもありますが、定期的に水質が点検されているものでなければ100%安全とは言えません。
生水には、様々な菌や不純物が含まれている可能性があるからです。
エキノコックスという寄生虫の名前を、ニュース等で耳にした事はありませんか?
これは、食物や水などを介して感染する寄生虫で、感染した場合死に至る事もあり、毎年のように国内で感染が報告されています。
エキノコックスの主な感染源はキタキツネの糞なので、本州以南では比較的危険性が低いかもしれませんが、犬が感染源となる事もあり、注意が必要です。
水質検査を受けていない水を飲む事で、このような寄生虫に感染するリスクがある事は、登山をする上で知っておいて損はない知識です。
沢の水は、上記のエキノコックスの卵以外にも様々なものを含んでいる可能性があります。
上流に動物の死骸があったかもしれませんし、山小屋やテント場の汚水が流れ込んでいるかもしれません。
一見綺麗に見えても、水質検査を通っていない水は、その水がどのような経路を経て流れ着いてきたのか証明できないのです。
飲んで何ともない可能性ももちろんありますが、病院にすぐ行く事ができない登山中は、お腹を壊すだけでも一大事になり得ます。
このようなリスクがありますので、沢の水を無暗に飲む事はなるべく避けた方が無難です。
より安全に飲むには?
しかし、どうしても沢の水を飲まなければいけない状況に陥る事があるかもしれません。
あまり考えたくない事態ですが、持参した水が底をついてしまったり、最悪の場合道に迷って遭難したりするかもしれません。
手持ちの水は無く喉はカラカラ、そんな時に、山の中を流れる美味しそうな水を見つけたら皆さんはどうしますか?
そのような状況下なら、もちろんその水を飲みますよね。
非常時ですから仕方ありませんが、ここで皆さんに知っておいていただきたいのは、より安全に沢の水を飲む方法があるという事です。
生水には様々な菌が潜んでいる可能性がありますが、これを殺菌する事ができれば、水を飲む事で生じるリスクを大幅に下げる事ができます。そのためには、
1.沸騰させる
2.濾過する
この2つの方法が有効です。
煮沸する
ご存知の方も多いかもしれませんが、煮沸は減菌に大きな効果を発揮します。
水が沸騰するような高温下では、多くの菌が死滅するためです。
標高が高い場所では気圧の影響で沸点が下がりますが、富士山山頂でも90°を少し下回る程度ですので、殺菌には十分な効果を発揮すると言えるでしょう。
やり方ですが、お手持ちのバーナーとガス缶を使って水を沸騰させ、そのまま5分ほど火にかけて下さい。
こうする事で、多くの菌は死滅し、水の安全性は格段に向上します。
ただし、煮沸消毒では全ての菌を死滅させることはできません。
菌によっては、通常の過熱で退治できない事もあるためです。
日帰りや山小屋泊の山行の場合はあまり携帯しないバーナーやガス缶ですが、荷物に余裕があれば、軽量タイプを装備に加えてはいかがでしょうか?
非常時の煮沸のためだけではなく、例えば登山中にドリップコーヒーが飲めるようになるのは大きなメリットですよ。
着火用のライターは、壊れた時のために予備を持っていく事をお勧めします。
ろ過する
生水の安全性を高める方法としては煮沸が最も手軽ですが、もう一つ、ろ過するという方法もご紹介したいと思います。
ろ過の作業自体は中学の理科の時間に経験されている方もいらっしゃるかと思いますが、これは水の中の不純物を除去し、水を浄化する方法です。
理科の実験では、漏斗と言うフラスコを逆さまにしたような容器にろ紙をセットし、上からろ過する水を注ぎます。
フィルターコーヒーをイメージしていただければ分かりやすいかもしれません。
ろ紙を通った水が、不純物を取り除かれた綺麗な水です。
ろ過装置は、ペットボトルと布切れ、菌を取り除く効果がある炭、砂や砂利などがあれば自作する事も可能ですが、荷物を極力減らしたい登山には不向きかもしれません。
もちろん、漏斗とろ紙を持っていくのも現実的ではありません。
代わりに、市販のもので、携帯浄水器が販売されています。
小型の容器の中に、ろ紙の代わりとなるフィルターがあらかじめセットされたもので、最近ではストロー付きで直接飲む事ができるタイプのものも販売されています。
バーナーと同様非常に軽いものもありますので、1つ購入しておくのはいかがでしょうか。
登山だけではなく、災害時の備えとしても活用する事ができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
美味しそうでついつい飲んでみたくなる沢の水ですが、安易に口にしてしまうと思わぬトラブルが待っているかもしれません。
対処法も含めて知った上で、より安全に登山を楽しんでいただけたらと思います。