美しい冬山を見たいから登る、山が好きだから登る。そういう単純な想いだけでは登れるところではない雪山。
今年こそは冬山(雪山)を登りたいと思っておられる方に、冬山(雪山)装備として必要な物、テント泊や食事をするために必要な物をご紹介したいと思います。
雪山(冬山)登山に必要なこと
「よし、来週はあの山に登ってみよう!」
夏山はこのように思いつきで行くことはできますが、冬山となるとそうはいきません。
雪で覆われた山道や岩肌を歩く冬山は、氷点下になる気温に加え、荒れ狂う強風や風雪で身動きが取れなくなる気象条件になることはよくあります。このように冬山は判断を誤れば、命にも関わってくるものですから、周到な調査と準備、そして何より覚悟が必要となるのです。
つまり冬山を目指すには、体力や気力も含めた個人のレベルアップと、それなりの山の経験のステップを踏んでから挑むことが必要なのです。
雪山登山に必要な4つの装備
雪山装備①ピッケル
手に持つのは、ストックではなくピッケルです。これは雪山で行動するときの安全を確保するためにはなくてはならない物です。
高い強度でできた金属のヘッドや先端と樹脂製のシャフトが一体になった、一見杖のように見えるものです。
シャフトの先端にはスピッツェと呼ばれる石突きがあって、杖として使う場合はこの部分を雪に突き刺しながら上り下りすることになります。
また急斜面などの場面では、尖った斧のような形状のピックを雪面に突き刺しながら上り下りします。
因みにピッケルという言葉はドイツ語で、英語ではアイスアックスと言います。
雪山装備②アイゼン
冬山で歩くのは雪原だけでなく、凍りついた岩場のようなところもあるなど、ルートは危険に満ちています。そこで必要になってくるのが、金属の爪を靴の底に装着するアイゼンです。
このアイゼンは爪の数によって4本、6本、10本、そして12本爪とありますが、急斜面や岩場のルートを通る場合、4本や6本爪では不十分なので、せめて10本爪でもあれば安心です。
因みにアイゼンという言葉は、ドイツ語のシュタイクアイゼン (Steigeisen ) に由来しています。
つまり「動詞の登る=steigen」と「鉄=eisen」から成る語でして、単に「アイゼン」というひとつの言葉でこの道具を指すのは、日本だけで通じる和製語なのです。
英語名はクランポン(Crampons )と言います。
雪山装備③ゲイター(スパッツ)
雪道を歩いていると靴のなかに自然と雪が入ってきて、靴のなかが濡れて辛い経験をすることがあります。
これを防ぐのがゲイター(スパッツ)です。
長さに応じてその呼び名が違います。くるぶし当りだけを覆うタイプのショートゲイターと膝当りまで埋まるような雪道の時につけるロングゲイターがあります。
また3000m級の厳冬期の山に行くようなときには、靴の上から履くオーバーシューズを使いますが、これは膝の近くまで覆われているので、暖かく靴が濡れることはまずありません。
雪山装備④ヘルメット
低い山の雪原や林のなかだけを歩くような場合は必要ないでしょうが、落石や転倒、滑落などの可能性のある岩場のルートを通過するようなことがあれば、このヘルメットが必要になります。
雪山登山に必要な服装と選び方
手袋もレイヤリングが必要
氷点下の冬山ですから手袋も必需品です。
かといって分厚い手袋だけでは手先を使う細かな作業ができません。冬山では薄手、厚手そしてその上に付けるオーバーミトンというようにレイヤーにして、必要に応じて脱着できるようにしておくことが必要です。
雪山登山に必要ウェアの選び方
冬山のウェアで大切なことは、温度調節が可能なようにレイヤーにしておくことです。
衣服を内側から順に汗抜けのいいウールの肌着、通気性に富む化繊のベースウェア、保温と速乾性に優れたフリースウェア、そして必要に応じて外側には風雪から身を守るオーバーウェアです。
なおキャンプ地などで停滞するときなどのために、ダウンウェアを持参するのもいいでしょう。
ネックウォーマー・目出し帽子も必要
厳冬期の登山で風雪に晒されると、寒さはそれこそ骨身に沁みるほど倍増します。
こんなときは首の周りに巻く保温ウェアのネックウォーマー(ネックゲイター)や目出し帽子のバラクラバがあれば、暖かさが断然違ってきます。
因みにこのバラクラバという名前の由来は、クリミア戦争(1853年-1856年)中の1854年10月東ヨーロッパの黒海に面した町バラクラヴァで、ロシア軍と戦ったバラクラヴァの戦いに出かけるイギリス兵のために、妻たちが顔ごと覆う手編みのウールの帽子を持たせたようです。その帽子を被って戦った地名から「バラクラバ(バラクラヴァ)」(Balaclava)と呼ばれ、これが世界的に広まったようです。
冬山(雪山)でテント泊に必要なものと選び方
厳冬期仕様のテント
厳冬期に使用するテントは軽いことが基本であることには変わりはありませんが、内張りのある二重構造のものが保温性に優れていて理想的です。
またそれに加えて、スノーフライシートを外側に張ることができれば、雪の付着を避けることができます。
寝袋・シュラフは羽毛100%
シュラフは夏に使う綿を詰めたものではなく、少し高価なものですが冬山にはやはり羽毛100%のものが理想です。
冬山では靴を抱いて寝ますので、サイズも少し余裕のある大きさが必要です。
断熱マットがあれば快適
テント内での生活を暖かく快適に過ごすため、断熱マットがあれば快適です。
これはテント内のことだけでなく、行動途中の休憩などのときに座布団代わりに使えます。
冬山(雪山)で食事に必要なもの
バーナー
冬山にはできれば火力の強いガソリンバーナーが望ましいのですが、ガスの場合は、冬季も含めすべての季節及び3000m級の高地でも使えるOD缶(イワタニプリムスのハイパワー(Tガス))があれば特に問題ありません。
食材はフリーズドライもおすすめ
冬季は食料の傷みも少ないことから、肉などを持参することも可能ですが、重量を気にするのであればフリーズドライ品の持ち込みもいいでしょう。
テントのなかでの食事は、麓で食べるときの数倍は美味しく感じるものです。
保温性の水筒が必須
冬山といえども行動中は汗をかくため適度な水分補給が必要です。ペットボトルなどでは氷結してしまうので保温性に優れた水筒を持参することが必要です。
クッカー(コッヒェル)
冬山に限りませんが鍋としてのクッカー(コッフェル)セットはあらゆる調理や飲み物を作るのに必要です。
冬山(雪山)必要なものリスト
これまで冬山の装備について必要なものまたあったらいいというものについて述べてきましたが最後にこれをリストにしてみましたので、活用してください。
- ピッケル(アイスアックス)
- アイゼン(クランポン)
- ゲイター
- 手袋
- 冬用衣服:インナー、ベース、フリース、オーバーウェア、ダウンウェア
- ヘルメット
- 冬用テント:二重構造、スノーフライ
- 寝袋(シュラフ):羽毛100%
- 断熱マット
- ガソリン又はガスのシングルバーナー
- 食料:フリーズドライ品
- 保温性の水筒
- コッフェル
- 冬用登山靴(底の硬いもの)