登山ストックは長時間の歩行をサポートし、安全な山行の大きな一助となるアイテムです。
急な登りや疲労で弱まった下山時の補助などに力を発揮し、上手く使えれば様々なシーンで活躍してくれます。
今回は登山ストックの基本的な使い方と歩き方をご紹介します。
登山ストックの使い方
登山ストックは2本で1セット
トレッキングポールは各メーカーによって、2本で1セットの他、1本ずつ販売されている場合があります。
1本での使い方もありますが、基本は2本での使用を想定しましょう。
これは歩行時のバランス、足腰の負担軽減を考慮すると2本の方が効果的であるためです。
またモデルごとに重量が異なるので、原則同じモデルを使いましょう。
各部の名称と使い方
- ストラップとグリップ
最も長い間触れる部分で、グリップをしっかり握り、ストラップを使用する事で手首の負担が軽減できます。
グリップを握る位置は上り下りで変わり、りの時は少し下を持つ事で手首を伸ばさず最適な荷重で移動する事ができます。
下りの際は大きな段差や岩場でバランスを保ちながら安全に下降することが必要となるので、少し上か、時には被せる様に持つ事もあります。
- バスケット
バスケットはトレッキングポールにおいて欠かせない部品のひとつで、狭い溝や泥などにポールが埋まるのを防ぎます。
これがないと歩行中にポールが引っかかり抜けなくなる以外にも、強度が弱いモデルや最悪の場合はポールが折れる可能性もあります。
3シーズンでは大半のポールに標準装備されているバスケットを使用し、雪が深い厳冬期では幅の広い専用のスノーバスケットを使用しましょう。
- 石突き
石突きは場面ごとに使い分ける必要がありますが、基本的にはプロテクターを付けたままで使用します。
これは先端が細いトレッキングポールだと植生を傷つけてしまうためであり、特に登山者の多い山域やルートでは、登山道の裸地化は大きな課題となっているので、少しでも自然へのインパクトが減るよう配慮しましょう。
プロテクターを外す場面としては、接地面積の少ない場所や岩場などになります。
- シャフト長の調整
使用前に最も調整が必要な部分になります。
シャフトの調整機構は各モデルで異なり、画像はねじ込み式になります。
他にもレバーで押さえ込むカムロック式や、内部に紐を通して締め込むものがあります。
どのタイプも固定はしっかりしているので、使用時にストレスにならないものを選びましょう。
シャフト長の調整は、持った時に腕の関節が90度に曲がる程度を目安として設定すると良いでしょう。
登山ストックを使っての歩き方
まずは基本的な歩行を学ぶ
トレッキングポールの使用は非常に効果的ですが、その恩恵を十分に得るためには、まず登山時の歩行を学ぶことが大切です。
体重移動、足の置き方、滑りやすい場所の把握など、トレッキングポールが必要な場面、足の負担になりやすい状況を理解しておくことで、より効果的に使用することができます。
もちろん、登山が未経験で初めに使っても効果はありますが、歩行技術のベースが確立してくると、自ずとポール操作も上達するでしょう。
上りでの使い方
先述の通り、斜度によってグリップの位置やシャフト長を短めにしておき、腕を先行して伸ばしすぎず、接地した地面とグリップが安定したら、ゆっくり体重を移動させます。
腕が先行すると一歩の距離も伸び、体力の消費も激しくなります。
急いでしまうと接地面が崩れたバランスが保てなくなるので、周囲の状況を焦らず良く確認しておきましょう。
また、狭い場所やポールが使用できない程の斜度になった場合は、無理に使用せず片手でポールを持って手を使用するか、広い場所で一度収納しておきます。
一度出したポールを収納するのは非常に面倒で横着してしまいますが、時間をかけても安全を優先しましょう。
下りでの使い方
下りでは上りと異なり非常にバランスを崩しやすく、宿泊山行では荷物も多いので下りの足腰の負担は大きくなります。
シャフト長は長めに設定し、グリップも上部か、必要に応じて被せるように持っても良いでしょう。
下降時は荷重を分散させながら、出来る限りフラットな場所を選んでポールを接地させ、勢いで下らず足場を確認しながら慎重と思えるくらいで良いので、ゆっくり体重移動します。
また、疲れてくるとポールに荷重をかけすぎてバランスを崩す可能性もあります。
トレッキングポールはあくまで補助的なアイテムなので、体を支えきれない程疲労しているときは、無理せず休憩を取りましょう。
積雪時、沢登りでの使用
(北アルプス、常念岳へ向かう雪渓 この下は沢が流れ、一歩間違えれば冷たい水の中へ)
トレッキングポールは登山道での使用が多いかと思いますが、積雪時や沢登りでも使用できます。
山は街中と異なり平坦な場所が少なく、非常に凸凹しています。
ここに雪が積もる事で、一歩踏み外すと体の半分は埋まるほど沈むことは珍しくありません
。積雪時は歩行のサポートだけでなく、目先の場所にポールを突き刺すことで、問題なく歩行できるかを確認する事ができます。
沢登りでも同様に、水中の状況は目視確認だけでは困難で、渡渉時には水流に耐えながら足元を確認する事に大変重宝します。
一般登山での使用に慣れたら、色々なシチュエーションで安全を確認の上試してみるのも良いでしょう。
いかがでしたか。縁の下の力持ちといえるトレッキングポールを活用して、安全な登山を楽しみましょう。