開聞岳は海からそびえる姿がとても印象的な山。開聞岳は、昔から海上交通の目印にもされてきた山で、各方向から見事な円錐型の山容が望め、別名「薩摩富士」とも呼ばれます。本記事では、開聞岳の概要や登山口情報、初心者向けのルート解説や、登山に最適な服装などをご紹介します。
開聞岳とは?
開聞岳は、鹿児島県指宿市の最南端部にそびえる山です。標高924mで、標高は高くありませんが、1500mを基準とした日本百名山に例外的に選ばれており、開聞岳の山容を深田久弥氏は以下のように著述しています。
「これほど完璧な円錐形もなければ 全身を海中に乗り出した これほど卓抜な構造もあるまい。 名山としてあげるのに 私は躊躇しない。」
引用元: 深田久弥「日本百名山」より引用
薩摩半島の一部ですが、半島から開聞岳が突き出ているようになっているので、まるで海にそびえているようにも見えます。開聞岳は火山で、有史以来何度か噴火した火山で、見事な円錐形をしていることから、海と開聞岳の姿が非常に印象的で、昔から絵画や小説などに登場してきました。鹿児島湾の入り口にあることから、「海門岳」と呼ばれのちに、現在の開聞岳となったということです。
開聞岳は火山ですが、最近では2000年に噴気が確認された以外、活発な活動はなく入山規制などもされていません。
開聞岳の自然
前述の通り、開聞岳は火山ですが、活発な活動もなく、温暖湿潤な気候でもあるため、植生が豊かです。
山全体は、スダジイ、タブノキ、アラカシなど、照葉樹を中心とした広葉樹の原生林となっており、山全体を樹木が覆っています。
花は、春先にチクシショウジョウバカマ、スミレなど九州低山の一般的な花が咲きます。特に樹木の花が多く、ミヤマキリシマやアオキの花も多く、特に6月に満開になる南九州固有種の「カイモンサツキ」が有名です。
開聞岳登山の見どころ
開聞岳は、何と言っても山頂からの眺望です。特に南側は海になっており、さえぎるものが一切ありません。天候さえよければ、360度ビューの絶景で、南に東シナ海と、種子島、屋久島などの南西諸島の島々、西には長崎鼻、東には枕崎方面の砂浜、北には桜島、池田湖が眺められます。
これらの風景は山頂でなくとも、登山中も眺められるので、きつい登りの中、一服の清涼剤として慰めてくれます。登山中に四方が眺められるので、登山ルートがらせん状になっていることの利点でもあります。
開聞岳登山ルートの難易度や所要時間
開聞岳の難易度は?
開聞岳は、登山ルートとしては一つしかありません。その登山ルートは、岩場などもあり、少々危険な箇所もありますが、地元の小学生が遠足で登山するほどなので、気を付けて歩けば問題ありません。
標高は924mで高くはありませんが、登山口の標高は低く900m程度を登山することになりますので、時間と体力がかかります。しかし、難易度としては低いと考えていいでしょう。
開聞岳登山の所要時間
通常、火山のような急斜面を登る登山ルートは富士山のようにつづら折りが多いのですが、開聞岳の登山ルートは珍しい「らせん型」です。このらせん型のおかげで、登りながら全方位を望むことができます。
登り3時間、下り2時間30分、休憩を含め6時間30分程度、ひたすら登り、ひたすら下る、登山らしい登山ルートです。
開聞岳初心者におすすめの登山ルートを徹底解説
登山口(かいもん山麓ふれあい公園)
登山口は、かいもん山麓ふれあい公園内で、開聞岳2合目に位置するところに登山者用の駐車場があり、自家用車の場合は、駐車の心配はありません。バスの場合は、登山口バス停から20分です。トイレやコインロッカーがありますので、ここで準備したうえで、登山届に記帳して出発しましょう。
開聞岳の登りは、ひたすら登り下るルートです。かなり足腰に負担がかかりますので、しっかりとストレッチをしておきましょう。特にアキレス腱や股関節のストレッチは入念に。ストレッチを行っておくと、登山中の事故が予防され、下山後も筋肉痛が少なくなります。
登山口~5合目(所要時間 1時間)
2合目から本格的な登山道です。うっそうとした松林の登山道を、2.5合目、3合目、4合目の標識を見ながら、徐々に高度を上げていきます。4合目あたりから、岩や砂礫が多くなり足場が悪くなります。約1時間で5合目に到着。ここでやっと視界が開けます。展望ポイントになっていますので、ちょっと休憩しましょう。
この展望ポイントにはベンチがあり、西方向が開け、長崎鼻を遠くに望むなど展望もいいため、ついつい長居してしまいがちですが、休憩は10分以内に収めましょう。通常、登山では60分から90分程度で5~10分程度の休憩が望ましいとされています。それ以上休むと、せっかく登山に慣れた体が元に戻ってしまいます。できれば、リュックなども降ろさずに、立って休憩することをおすすめします。その際は、糖分や水分を補給しておきましょう。
5合目~仙人洞(所要時間50分)
5合目からはさらに登りがきつくなります。岩の段差が大きくなり、乗り越えるところも出てきます。ここから南側に回り込んでいきます。6合目、7合目の標識を過ぎると、展望が開け、東シナ海が眼下に広がります。天気が良ければ、遠くに種子島、屋久島などが見えます。
そのまま進むと、仙人洞と呼ばれる岩窟にたどり着きます。ここは、山伏たちの修行の場として使っていた岩窟で、噴火した時の溶岩です。大きな穴が開いていますので、気を付けて通りましょう。
5合目から先は、大きな岩を乗り越える場所が出てきます。補助のために鎖やロープがある場所もありますが、どうしても手掛かりが無いときだけ、使うようにし、できるだけ使わずに自分の手で岩をつかみながら登りましょう。その際は、「3点確保」を心がけて安全性を確保するようにしてください。
3点確保とは
3点確保は、別名3点支持ともいい、足場が悪い岩場などを登るときの基本です。両手と両足の4点を基本として、動かすのは常に1点だけ、それ以外の3点は確実に固定して支えることによりバランスを保つ、基本的な登山技術です。
仙人洞~山頂(所要時間50分)
仙人洞を過ぎると、ますます険しくなります。8合目、9合目と過ぎていきますが、ここのあたりは溶岩円頂丘または溶岩ドームとも言われ、ドーム状に溶岩がせりあがった場所です。したがって、大きな溶岩がいたるとこから噴き出した跡があり、それにしたがい、登山道が険しくなります。気を付けて進みましょう。
9合目を過ぎると急にあたりが開けます。ここから山頂までも、岩を乗り越えるためのはしごなどもあり、険しい岩場ですが、慎重に登れば問題ありません。ほどなく赤い「御嶽神社」の鳥居が見え、横を通り抜けると、やっと山頂に到着します。
山頂は、岩が多くフラットな場所は無いので、岩に腰かけて昼食をとりましょう。岩は固くて冷たく、濡れていることもあります。このよう場合には、携帯用の座布団が便利です。スチロール製などの軽くて携帯できる座布団が登山用品店に売っているのでおすすめです。
下山(所要時間2時間30分)
下山は、往路をそのまま下ります。登るときに乗り越えた岩をそのまま下っていくことになるので、登りよりも慎重さが必要です。ただし、縦走路のように下山中の登りはないので、どんどん下っていくことができるので、登りよりも30分程度早い所要時間になります。
登山では、下山時の事故が一番多くなっています。登りで体力を消耗していることに加え、下りのほうが体のバランスがとりにくいためです。そのためにも、トレッキングポールを活用しましょう。トレッキングポールを使用する場合は、最大の効果を発揮するために1本ではなく2本使用し、ポールの先にはキャップをつけるようにします。昔は、キャップを外すのが主流でしたが、最近は、登山道保護と植生保護のため、キャップを付けるのが常識になっています。
開聞岳登山におすすめの服装は?
開聞岳が位置する鹿児島県指宿市で、ランナーに人気の菜の花の中を走る「いぶすき菜の花マラソン」は、1月に開催されることからわかるように、九州でも温暖な気候で知られる場所です。したがって、ほとんど雪が降るようなこともなく、真冬でもそれほど防寒を意識することは必要ありません。どちらかというと、暑さ対策を優先していいでしょう。
インナーウェア
インナーウェアは、冬は薄い長袖、夏は半そでTシャツでいいでしょう。もちろん、吸湿速乾素材を選びます。
ミッドウェア
冬は薄手のフリースや、長袖シャツを着用し、夏場は半そでシャツ、もしくは必要ありません。
アウター
温暖とはいえ、山頂付近は海からの風が直接吹くため、風で体が冷えます。冬も夏もウィンドブレイカーやジャケットで風を遮れるように準備しておきましょう。
ボトムス
夏はハーフパンツとトレッキングタイツ、冬はロングパンツに薄手の防寒タイツを着用します。気温によっては、冬場の防寒タイツは必要ないかもしれません。
帽子
9合目付近まで、樹木が多いですが、山頂付近は陽射しが強いので、帽子を着用しましょう。
開聞岳の周辺の施設
開聞岳は、登山はもちろん、登山以外のレジャーもおすすめです。登山以外の開聞岳の楽しみ方をご紹介しましょう。
開聞岳撮影ポイント
前述したように、薩摩富士とも称される開聞岳はカメラの被写体としても大人気です。例えば、長崎鼻からは、海岸の向こうに開聞岳の雄姿が撮影できます。また、JR指宿枕崎線西大山駅からは、開聞岳をバックに列車を撮影することができ、全国から多くの撮り鉄が訪れます。
かいもん山麓ふれあい公園
開聞岳の登山口でもあるこの公園は、パークゴルフ場やゴーカートが併設されており、開聞岳を眺めながらレジャー楽しむことができます。キャンプ場もありますので、開聞岳登山とともにアウトドアを満喫することができます。
かいもん山麓ふれあい公園HP
指宿たまて箱温泉
鹿児島県指宿市の「指宿たまて箱温泉」は、海の向こうに開聞岳を望む絶景露天風呂、砂蒸し温泉があり、絶景を楽しむながら温泉に入ることができます。開聞岳登山の後、登った開聞岳を眺めながら温泉にはいるのは格別です。
登山後のおすすめの温泉や宿泊施設
開聞岳周辺にはあまり宿泊場所はありません。登山前後の宿泊は、指宿温泉をおすすめします。開聞岳登山口から車で30分程度で、多くの温泉旅館があるため宿泊に困ることはありません。
温泉が多い鹿児島県内でも有数の温泉地で、通常の温泉も人気ですが、海岸の砂浜に体を埋めて横たえる「砂蒸し風呂」が有名です。波打ち際で波の音を聞きながら暖かい砂の中に入っているとリラックスでき、癒し効果満点です。
指宿たまて箱温泉HP
まとめ
開聞岳の初心者向け登山ルートや、開聞岳の情報をまとめてご紹介しました。温暖な気候で1年中登山できる開聞岳。その魅力とともに、登山後のレジャーや、温泉などが充実していることもわかっていただけたでしょうか?
九州最南端地域で遠いですが、ぜひ、開聞岳を訪れてみてください。絶景に圧倒されること間違いありません。