九州鹿児島県と宮崎県にまたがる霧島連山は、気軽に散歩できる湖畔の遊歩道から、険しい火山の登山ルートまで様々なトレッキングが楽しめる山岳です。
また、登山口は駐車場やビジターセンターが整備されており初心者も親しみやすくなっています。本記事は、霧島連山の山と、難易度に応じた登山ルートをご紹介していきます。
霧島連山とは?
霧島連山は、霧島山ともいい、九州南部、鹿児島県と宮崎県にまたがる火山群の総称です。霧島連峰、霧島山地、または、霧島火山群とも呼ばれます。今でも活発に活動を続ける火山があり、新燃岳、お鉢、最近では硫黄山の活動が盛んです。
いたるところで入山規制(2019年1月)
霧島連山は、特に最近、活動が活発になっており入山規制されています。霧島連山には、17個の山岳や湖沼がありますが、そのうち5個が立ち入り規制されており、そのほかにも細かく規制がされています。霧島連山の人気登山ルートである、えびの高原から高千穂河原までの霧島山縦走ルートも、新燃岳の火山活動で寸断されており利用できません。
かつては可能だった霧島山縦走
かつては大人気だった霧島山縦走ですが、前述の通り、新燃岳の噴火のため使用ができなくなっています。登山ルートを簡単に紹介すると、
えびの高原~韓国岳~新燃岳(しんもえだけ 入山禁止)~獅子戸岳(ししこだけ 入山禁止)~中岳(入山禁止)~高千穂河原
所要時間約6時間程度のちょうどいい天空の散歩道で、ミヤマキリシマの季節はピンクに染まった登山道を大きな起伏もなく歩けるため多くの登山者でにぎわっていました。1990年から2004年まで通行禁止、その後、通行可能になりましたが、2010年以降、通行禁止になっています。早く噴火が収まり通行が再開されることを祈るばかりです。
霧島連山 初心者におすすめの登山ルートをご紹介
次からは、2019年1月現在、入山規制されていない、おすすめ登山ルートをご紹介します。
高千穂峰 登山ルート
■高千穂峰(たかちほのみね 標高1,574m) 難易度★★☆☆☆
高千穂河原登山口から、お鉢を歩き、高千穂峰山頂へ至るルートです。所要時間は休憩含め4時間、難しい場所は無く、行程も長くないため、初心者向きの登山ルートと言えます。
【山の紹介】
神話の時代、天からニニギノミコトが降り立った天孫降臨伝説の舞台と言われる山です。その深い歴史と、堂々たる火山特有の山容から、韓国岳に次ぐ霧島連山の第二峰でありながら、霧島山の主峰となっています。山頂には降り立ったニニギノミコトが突き刺した「天の逆鉾」が立っており、ご来光時は多くの登山客でにぎわいます。
【見どころやポイント】
見どころは、今も活発に噴煙を出しているお鉢、荒涼とした山肌を染めるミヤマキリシマ、山頂の天の逆鉾。コンパクトで見どころが多い登山ルートです。登山道は小さな石や砂が多く、足を取られやすいのでバランスを取って歩きましましょう。また、お鉢周辺は強風で道が狭いため転落しないように十分に気を付けることが大切です。
韓国岳 登山ルート
■韓国岳(からくにだけ 標高1,700m) 難易度★★★☆☆
大浪池登山口から大浪の池を通り、韓国岳山頂へ至ります(本来の登山口である韓国岳登山口からは入山規制中です)。所要時間は休憩含め5時間30分、難しいところはありませんが、急登が多く、体力が必要です。
【山の紹介】
霧島連山の最高峰で、霧島山登山としては、高千穂峰と並ぶ人気の山です。直径900m、深さ300mほどの大きな火口を持っており、巨大な山容をえびの高原から望むことができます。山頂からの展望に優れ、山名の由来である韓の国(朝鮮半島)まで見渡せるといわれるほどです(実際には見えません)。以前は、山頂から新燃岳方向に縦走路が伸びていましたが、今は通行止めになっています。
【見どころやポイント】
見どころは、常に多くの水をたたえる大浪池とその斜面に咲くミヤマキリシマの展望や冬の霧氷と、韓国岳山頂からの展望が圧巻です。山頂はいつも強風が吹きますので帽子などを飛ばされないように注意しましょう。
大浪池 登山ルート
■大浪池(おおなみのいけ 標高1,411mm) 難易度★☆☆☆☆
大浪池登山口から大浪池を一周するルートです。韓国岳登山の途中にも立ち寄れますが、大浪池単独でも楽しめます。所要時間は休憩含め3時間程度、体力に自信が無い初心者にはおすすめです。
【山の紹介】
大浪池という名称ですが、立派な火山で、山頂には水面の標高1,241m、周囲1.9km水深11mの火口池があり、山名の由来となった「お浪伝説」の舞台になっている神秘的な池です。この湖の周りを1時間30分で一周できる遊歩道が完備されており、モミ、ツガの原生林とともに、マンサクやミヤマキリシマも見られます。登山口から40分程度で大浪池展望所にたどり着けるため、気軽に登ってくる観光客も多くみられます。
【見どころやポイント】
火口池周りには、春はマンサク、初夏はツツジやミャマキリシマがきれいな花を咲かせるため、池とのコントラストが人気です。厳冬期には霧氷が見られることもあります。登山口から火口縁まで登ってしまえば、比較的な平坦なルートですのでのんびりと歩くことができます。ただし、周囲の登山道は狭いためツツジの枝などにひっかからないように注意しましょう。
夷守岳 登山ルート
■夷守岳(ひなもりだけ 標高1,344m) 難易度★★★★★
宮崎県小林市の夷守岳登山口から夷守岳へ登るルートです。所要時間は休憩含め往復7時間程度で、行程が長いため、それなりの体力が必要です。
【山の紹介】
霧島連山の東側に位置し、離れているため単独峰のようにも見えます。霧島連山の山岳の多くは火山ガスなどの影響で、樹木が少なく荒涼とした山容ですが、夷守岳は山頂まで森林に覆われています。宮崎県小林市方面からの円錐形の姿が美しく、「生駒富士」と呼ばれ親しまれています。夷守岳はこの山容からか、古代から有名で、「日本書紀」に、「筑紫の国を巡狩せられたときに、夷守岳にこられた」との記述があるほどです。
【見どころやポイント】
荒涼として岩が多く、低木や草原が多い霧島連山の中で、夷守岳は植生が多い山です。登山道の森林は、霧島連山の四季の自然を感じることができます。特に危険な箇所はありませんが、所要時間は休憩含め7時間程度と行程が長いため、それなりの体力が必要です。初心者は時間の余裕を持って、経験者と登山しましょう。
白鳥山 登山ルート
■白鳥山(しらとりやま 標高1,363m)難易度★☆☆☆☆
えびのビジターセンターにある白鳥山南登山口から白紫池そばを通り白鳥山山頂へ至ります。所要時間は休憩含め往復2時間30分程度で、標高差160メートルで自然探求路として整備されているため登山というよりハイキングというイメージです。
【山の紹介】
山頂南側に火口湖の白紫池(びゃくしいけ)、南東に六観音御池(ろっかんのんみいけ)があります。人工林を含め植生が豊かで、山腹をブナやシラギ、ミヤマキリシマなどが覆い、野鳥も多く、自然を楽しむための山です。
【見どころとポイント】
前述の通り、厳しい登山道は無く、ハイキングとして初心者はもちろん、家族で楽しめる山です。見どころは山頂や途中の展望所からの白紫池や六観音御池の風景や、えびの高原と韓国岳などを望むことができます。
霧島連山登山におすすめする服装
霧島連山は、一般的な登山用の服装で登山可能です。九州南部で温暖ですが、冬は雪が降り、日中でも氷点下になりますので、防寒対策が必要です。また、夏場は紫外線対策も忘れないようにしましょう。
アンダーウェア
夏場は、木綿ではない吸湿速乾タイプのTシャツ程度で十分です。冬は長袖の保温タイプのアンダーウェアを着用しましょう。
ミドルウェア
夏季は薄手の速乾タイプのシャツで構いませんが紫外線強いので長袖か、アームカバーなどで肌を保護しましょう。冬場はフリースがおすすめです。
アウターウェア
山頂付近は風が強いので、夏も冬もウィンドブレーカーやレインウェアをアウターとして用意しましょう。
レインウェア
ポンチョではなく、上下セパレートのタイプを選びましょう。ゴアテックスのような防水透湿タイプをおすすめします。
ボトムス
冬季は防風性があるロングパンツを着用し、夏季はトレッキングタイツとハーフパンツの組み合わせが涼しくておすすめです。
帽子
日射対策として、必ず帽子は着用しましょう。全体的に強風なので、キャップの場合は、帽子と服をつなぐストラップも必須です。
霧島連山登山の宿泊情報
霧島連山の周囲にはたくさんの温泉旅館があります。例えば、霧島温泉、白鳥温泉、硫黄谷温泉など、温泉には困りませんが、登山口から少々離れています。登山口近くでは「国民宿舎えびの高原荘」があり、えびの高原側の韓国岳や大浪池、白鳥山などの登山に便利です。
国民宿舎えびの高原荘HP
まとめ
霧島連山の概要と登山ルートをご紹介しました。現在入山規制されている山々をご紹介できないのが残念ですが、いつかは入山規制が解除されてご紹介できる日がくるでしょう。その際は、ぜひ、登山ルートを確認して登山してみてください。霧島連山の素晴らしさを改めて感じることができることでしょう。