雌阿寒岳とは?
北海道は道東の釧路市と足寄町にまたがり、阿寒山峰群の主峰・雌阿寒岳。阿寒摩周国立公園のシンボル的な山として、大正時代から大衆登山の記録があり、長年にわたり慕われております。
雌阿寒岳の山開きはいつ?
雌阿寒岳は、夏山に限らず冬山としても人気で、年中登山者が絶えないため山開きは開催していないようです。ですが、毎年6月上旬に安全祈願祭を執り行っています。
ちなみに、雌阿寒岳と対をなしている雄阿寒岳は、毎年6月中旬に山開きをしています。
雌阿寒岳の登山ルートは3つ
雌阿寒岳の野中温泉コースは初心者におすすめ
雌阿寒岳は3つの登山道があり、雌阿寒温泉のある通称・野中温泉コースが最も利用者が多く初心者におすすめです。
山頂付近は急勾配ですが、登山距離が約3、3㎞で所要時間も往復4時間ちょっとという手軽さ、そして標高差800mほど、登山道はアップダウンがないほぼ登りで、頂上到達までの目安がつきやすいのも人気の要因です。小学生の子連れ登山者もおり、ある程度の体力があれば登れるようです。
オンネトーコース
距離は約4,2㎞、往復時間は4時間半ほどで、野中温泉コースより若干時間を要しますが、こちらも針葉樹林からハイマツ帯、火山らしい裸地へと登山道が変化していきます。
さらに、時間に余裕があれば、阿寒富士経由も可能です。
登山口はオンネトー湖畔からで、急な丸太の階段からというパンチの利いたスタート。7合目には雌阿寒岳と阿寒富士の分岐があり、阿寒富士経由だと約1時間みればOK。
阿寒富士への道は火山灰が深いため、思ったより進まないのですが、ここの醍醐味は阿寒富士頂上から雌阿寒岳の全貌を眺められること。荒々しい雌阿寒岳の姿に疲れも吹っ飛びます。
オンネトーコースと野中温泉コースは、登山口をつなぐ遊歩道が整備されているので、こちらのコースから野中温泉コースに下山ルートをとることも出来、2度おいしいですよ。遊歩道は1時間前後かかります。
阿寒湖畔コース
距離は約6キロと一番長く、往復時間も約6時間。雄阿寒岳との縦走に使われます。日本百名山では「阿寒岳」となっているので、雌阿寒と雄阿寒の両山を登ってこそ踏破とも言われてます。
阿寒湖畔からフレベツ林道を利用し6㎞近く行った地点に10台ほどの駐車スペースがあり、ここが登山口。
緩やかな起伏が続き、4合目は1042mピークで、硫黄採掘跡が見られます。6合目付近から視界が開けて上には剣ヶ峰が、眼下には阿寒湖と雄阿寒岳の姿が現れます。剣ヶ峰から山頂までは火山灰の稜線歩き。不明瞭な道なので、霧などで視界不良の時は注意が必要です。
雌阿寒岳の野中温泉コースの登山口と駐車場情報
このコースの駐車場は、雌阿寒温泉の北西側にあり、舗装して区画まである整備された公共駐車場。60台が駐車可能ですが、夏山シーズンの土日祝日は混雑しています。
水洗トイレに水道もある快適な駐車場なので、管理者側ではなるべく乗り合わせを呼びかけています。
登山口は雌阿寒温泉の裏にあります。
また、駐車場奥には、雌阿寒温泉~オンネトー湖岸~オンネトー野営キャンプ場へ抜ける遊歩道があり、森林浴にはもってこいの場所なので、時間があれば立ち寄りたいところです。
雌阿寒岳は入山前に登山規制が必要
さて、入山の前に気象庁や足寄町のサイトで火山活動の確認をお忘れなく。雌阿寒岳は、約2万年前から火山活動を開始し、幾度となく噴火を繰り返して10の山々が複雑な山容を形成した複式火山。約4000年前に現在の山体となりましたが、現在も活発な噴気が見られ、度々入山規制がかかっております。万が一、火山活動の異常を知らせるサイレンが聞こえた場合は、速やかな下山を指示しています。
雌阿寒岳登山の服装の注意点
もう一つ、北海道ならではの留意、ヒグマですがこの山ではあまり出没していませんが、クマ鈴、笛などは必携品です。
他に持ち物の注意点として、登山道には水場がなく、火山特有の照り返しが強いので、水は多すぎるかなと思うくらいは用意しておきたいものです。活火山の山なので最近は、ヘルメット着用者が増えているようです。
また、北海道の山の気候はプラス1000mと言われているように、本州の山と比べて夏でも夜間はもとより朝や夕方でも冷え込むので、万が一のことを考えて防寒着は備えておきたいものです。
雌阿寒岳の野中温泉コースを解説
登山口から3合目
登山口は、野中温泉の裏にあり、そこに入山届もあるので記入後、登山開始!
足を踏み入れると、端正なアカエゾマツの純林が広がります。林床は熊笹がなく、苔むした伐根や幼木、その間にゴゼンタチバナ、ジンヨウイチヤクソウ、マイズルソウが見られます。
アカエゾマツは養分の乏しい環境で生育する分、わずかな栄養を集めるのに根を張り巡らすので、根張りの回廊が続くしっとりとした幽玄の趣を感じさせ、自然のミストを体いっぱいに吸い込んで意気込みも新たに頑張ります。
3合目から7合目
3合目からは早くも森林限界となり、ハイマツ帯に入ります。とはいえ、まるでトンネルのように登山道の両側からハイマツが覆っているので、まだ森の中の様相。ですが、足元のイソツツジが目を引きます。
ハイマツ帯を抜けると、視界が広がり4合目。北海道三大秘湖であるオンネトーが姿を見せます。
季節や天候、見る角度によって色が変わることから別名・五色沼とも言われ、何色に見えるかも楽しみの一つですね。オンネトーを背後に急斜面のつづら折りの道すがら、メアカンフスマ、メアカンキンバイ、ヒメイワタデ、イワブクロの花たちがお出迎えしてくれます。
見頃は6月下旬から8月中旬。メアカンの名を冠しておりますが、知床連峰にも分布しております。
岩場の道を慎重に足を進めていくと、眼下には広がる森が樹海の名にふさわしい広大な展望が現れます。
そして、7合目付近でようやく阿寒湖も顔を出してきました。
この先は、年中風が強く、また遮るものがなく吹きさらしなってくるため、ここで絶景を眺めながら小休止、または下山後の昼食にはぴったりの場所です。
8合目~山頂
8合目になると、荒々しい火山礫が現れ、目印となるものがなくなってくるので、ペンキの印を見落とさぬよう、また滑りやすいので確実に登っていきましょう。
登るに従い、円錐形のすくっとした雄阿寒岳の山容を横目に、火口壁が近づいてくると、噴気孔の轟音が聞こえ出してきます。
雌阿寒岳の核心部、外輪山に取りつくと9合目付近。火口は太古の地球創生を思わせる景観が迫ります。
巨大なクレーターのように火口は大きく落ち込み、そこにはもうもうと噴気が立ち上がり、あたかも大地の鼓動のような迫力に、怪しい色味の赤沼が目を引きます。
そして火口の背後には、阿寒富士の堂々たる姿。雌阿寒岳の寄生火山である阿寒富士は、2000年前に誕生の新しい山とあって、無機質な黒味にますます圧倒されます。
雌阿寒岳山頂
その光景を目の当たりにしながら足を進めると、頂上標識がようやく見えてきました。旧火口には神秘的なグリーンの青沼が現れ、遠くに目を転じると、剣ヶ峰から阿寒湖、雄阿寒岳と道東ならではの観光スポットがパノラマに広がり、なんてすばらしい眺めでしょうか!
天候に恵まれれば、雄阿寒岳の奥に遥か摩周岳、斜里岳が臨めるのです。標高1499mと日本百名山の中では決して高くはない山なのに、深い森林から火山らしい荒々しさに至るまでを体現できるおススメの山です。
野中温泉コースのとっておき情報は、運が良ければ山岳ガイドのモコちゃんが案内してくれます。この宿で飼われている大型犬のモコちゃんは、単独で登山者を先導してくれるんです。
それが夏のみならず冬もですから、相当の山好きなんでしょうか?モコちゃんの気分次第なので、出会えたあなたはラッキーですよ。