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雌阿寒岳のコース情報!登山初心者向けの最短ルートから難易度別にご紹介!

北海道三大秘湖のひとつ、オンネトーから望む「雌阿寒岳(めあかんだけ)」。日本百名山に選ばれている「阿寒岳」は、この雌阿寒岳(標高1,499m)を指し、北海道で登録されている日本百名山の中では、最短時間で登れる山として人気があります。
「阿寒」の名がつく山は雌阿寒岳以外に、雄阿寒岳(おあかんだけ)、阿寒富士があり、雌阿寒岳はこれら3山の中で一番高い山。今回は、ルートが豊富で整備も比較的しっかりされている雌阿寒岳登山のコースを紹介します。阿寒富士に立ち寄るルートもありますよ。

雌阿寒岳ってどこにあるの?どんな山?

日本百名山のひとつ「雌阿寒岳」。いったいどこにあって、どんな特徴をもった山なのでしょう。雌阿寒岳を説明するときに役立つ3つのキーワードを紹介します。

雌阿寒岳は阿寒摩周国立公園の中にある

雌阿寒岳は「阿寒摩周国立公園」の中にあります。2017年に「阿寒国立公園」から今の名称に変更されたこの地域、阿寒湖と摩周湖、屈斜路湖の3つのカルデラ湖を中心にその周辺が国立公園に指定されています。
雌阿寒岳はマリモで有名な阿寒湖の南西に位置し、海抜1,499mの頂上からは阿寒湖はもちろん、阿寒摩周国立公園のほとんど手つかずの豊かな自然を目にすることができます。

雌阿寒岳は今も噴煙が上がる活火山

雌阿寒岳は今も火山活動がさかんな活火山。特に、頂上付近では硫黄の臭いを感じながらの山行になります。崖に囲まれて大きくえぐれた火口とところどころに上がる噴煙の姿に大地の躍動を感じます。そして、この火山活動の恩恵ともいうべき温泉が、雌阿寒岳の麓や少し離れた阿寒湖付近で楽しむことができます。

北海道三大秘湖の一つオンネトー

雌阿寒岳の麓にたたずむ湖がオンネトー。北海道三大秘湖※のひとつで、天候や見る位置や角度によって、湖面の色が変わるというなんとも神秘的な湖。特に、「オンネトーブルー」とよばれる独特の青い色は、見る人を魅了し続けています。
※北海道三大秘湖…オンネトー、東雲湖、オコタンペ湖

雌阿寒岳登山のおすすめのシーズンをご紹介

夏のシーズンは雌阿寒岳の名前が付いた高山植物が見れる

雌阿寒岳の登山はアカエゾマツなどの樹林帯からはじまります。その後、標高1,000mを越えたあたりから低いハイマツ帯に変わり、1,100mあたりから森林限界を越えて荒涼とした雰囲気の中を歩いていきます。

森林限界を越えたあたりの砂礫地から高山植物ゾーンに突入。この山の名前が含まれた「メカンキンバイ」と「メアカンフスマ」は、ここ雌阿寒岳で発見された花。固有種ではないですが、これらの可憐な花を目指してやってくる登山者も多く、このほかに「高山植物の女王」といわれるコマクサなども見ることができます。

秋のシーズンは見事な紅葉とオンネトーブルーのコントラスト!

9月中旬から始まる雌阿寒岳の紅葉。10月初旬~中旬あたりになるとオンネトー付近の紅葉が見ごろになり、多くの観光客も訪れます。赤、黄、オレンジ、緑、そしてオンネトーブルー、雌阿寒岳の茶色の様々な色の見事なコントラストは圧巻。オンネトーからの景色は登山前のテンションを上げてくれます。

登山中の視界が開けた道を振り返った時に目に入る景色も絶景。遠くに見えるオンネトーとそれを取り巻く紅葉の競演に、疲れもふっとびます。さらに、だんだん広がっていく景色の彩りのすばらしさで、登頂したときの感動も倍増まちがいなしですよ。

難易度別!おすすめの雌阿寒岳登山ルート4選

雌阿寒岳に初チャレンジの登山者、また来たよ!という登山者も楽しめるように定番の初心者向けの最短ルートから健脚者向けルートまで、4つのルートを紹介します。季節ごと、そして自分にあったルート選びの参考にしてください。

【初心者レベル】雌阿寒温泉(野中温泉)ルート(所要時間3時間40分)

雌阿寒温泉登山口―(70分)→5合目―(70分)→雌阿寒岳―(40分)→5合目―(40分)→雌阿寒温泉登山口

オンネトーに向かう途中にある雌阿寒温泉を起点とする登山ルート。正式には「雌阿寒温泉」ルートですが、雌阿寒温泉は実質「野中温泉」だけなので、地元では「野中温泉」ルートという名称が一般的。

一部に急な登りもありますが、紹介するルートの中では距離が最短なので、最もポピュラーなコース。登山初心者やファミリー登山はこのルートがおすすめです。

①雌阿寒温泉登山口から樹林帯へ

雌阿寒温泉の北側にある登山口が雌阿寒温泉登山口。ここから登山道に入ります。まずはカラマツやアカエゾマツ、ダケカンバの樹林帯から。階段となった露出した木の根を登り、自然の生き抜く強さを感じながら前へ進んでいきます。

②ハイマツ帯から森林限界へ

2合目を越えたあたりからハイマツが出現し、その後ハイマツのトンネルをくぐりながらの登山となります。

4合目を越えると次第に視界が開け、道も明るさを取り戻します。時折顔を見せるオンネトーがモチベーションを上げてくれます。

③森林限界を越えて砂礫帯を進む

森林限界を越えると、いよいよ砂利や岩のあるゴツゴツした道になります。これらは溶岩で、ここが火山であることを思い出させてくれます。荒涼とした中にも可憐なメアカンスフマやメアカンキンバイといったこの山のつく高山植物が目を楽しませてくれます。

④赤沼を横にしていよいよ登頂!

赤沼が見えたら頂上まであとわずか。

山頂までの緩やかな道を進むと雌阿寒岳頂上に到着! 頂上からは阿寒湖をはじめ、阿寒摩周国立公園の雄大な景色を存分に楽しむことができます。

初心者向けPOINT

頂上では風と落雷に気をつけて!
頂上は遮るものがなく、北海道の広大な景色を楽しめます。何も遮るものがない分、気をつけたいのが強風と落雷。
山頂付近の天気は変わりやすく、急な天候変化もあり得ます。特に、一度風が出だすと強くなることが多く、帽子などは飛ばされないように。崖や火口もあるので、走って追いかけることは禁物。また、頂上では過去に落雷による死亡事故も起きています。異変を感じたときは速やかに下山することをおすすめします。

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【初級者レベル】オンネトールート(所要時間5時間)

オンネトー登山口―(60分)→5合目―(80分)→阿寒富士分岐(8合目)―(40分)→雌阿寒岳―(20分)→阿寒富士分岐(8合目)―(60分)→5合目―(40分)→オンネトー登山口

オンネトーを越えたキャンプ場にある登山口を起点とするルート。雌阿寒温泉コースより急勾配の道が多いですが、このコースも登りやすいコースとして人気があります。時間的に余裕がある人や阿寒富士を横にしながら歩いてみたいという初心者の登山者におすすめ。

①オンネトー登山口から樹林帯へ

オンネトー国設野営場にあるオンネトー登山口。キャンプで一泊してからの登山も可能です。登山口からコースに入ると、樹林帯へ。倒木の上からは次の世代の木々が芽を出す「倒木更新」も見られます。苔むした世界は、まるで異次元の空間に入り込んだような気持ちにさせてくれます。

②ハイマツ帯から砂礫帯へ

4合目までの急坂を登り切ると、5合目あたりからハイマツ帯へと変わっていきます。ハイマツ帯を抜け切ると砂礫帯へ突入。ふりかえるとエメラルドグリーンがひときわまぶしいオンネトーが。右手にそびえる阿寒富士を眺めながら進み、阿寒富士分岐が見えれば8合目まで到着です。

③青沼を見ながら頂上へ!

雌阿寒温泉ルートでは頂上に着く前に赤沼が見えますが、オンネトールートでは色の青い青沼がお出迎え。火山成分により鮮やかな色が楽しめますが、なぜそれぞれに色が違うのか不思議ですね。

【中級者向け】阿寒富士立ち寄り周遊コース(所要時間3時間40分)

雌阿寒温泉登山口―(70分)→5合目―(70分)→雌阿寒岳―(20分)→阿寒富士分岐点(8合目)―(30分)→阿寒富士―(20分)→7合目―(50分)→5合目―(40分)→オンネトー登山口―(40分)→雌阿寒温泉登山口

雌阿寒温泉登山口から登り、頂上を経て阿寒富士を経由してオンネトー登山口に下山。そのあとオンネトー探勝路を通り、雌阿寒温泉に戻ってくるコースです。雌阿寒岳をぐるっと一周するので、雌阿寒岳とオンネトーを一度に楽しめるのもポイント。

①雌阿寒温泉ルートで山頂へ

急登が比較的少ない雌阿寒温泉コースで、体力を温存しながら頂上を目指します。

②頂上からの絶景を堪能したら阿寒富士分岐へ

頂上からの広々とした絶景を堪能し、爽やかな心地よい風に吹かれながらしばし休憩。赤沼と青沼の2色の神秘的な沼を見下ろしながら下っていきます。火山灰特有の滑りやすい道ですので、足元には十分気をつけて。次第に阿寒富士が迫ってきます。

③砂礫の道を進み阿寒富士へ

阿寒富士分岐(オンネトールート8合目)に着いたら左手に曲がります。阿寒富士は砂礫の山。一歩進めば半歩ずり落ちているくらい、一歩一歩が長く感じられます。踏み跡があるのでそこを進めば30分ほどで頂上に。雌阿寒岳の荒々しい姿を同じくらいの高さから眺めることが可能です。

④7合目を経由してオンネトー登山口へ

下りも滑りやすいので気をつけて。ケルンに着いたら左手に進み続けると、オンネトーコース7合目で合流します。急な下りになっているところがあるのでくれぐれも焦らずゆっくり下りましょう。徐々に木々が高くなり、妖精が出てきそうな神秘的な雰囲気の森の中を歩きます。

⑤オンネトー探勝路を通って雌阿寒温泉(野中温泉)へ

オンネトー登山口を通り過ぎ、キャンプ場へ。オンネトーを左手に見ながら湖畔沿いの探勝路に入ります。オンネトーの透き通る水の中に沈む倒木はなんとも神秘的。酸性の水が、木々が腐るのを防ぐため、このような幻想的な風景を楽しむことができるそうです。

見過ごしやすい東岸分岐で右に進路を取り、さらに足を進めていくと雌阿寒温泉に到着。いよいよゴールです。最後に温泉で疲れを取れるのも、このコースのおすすめポイントです。

【健脚者向け】阿寒温泉ルート(所要時間5時間40分)

雌阿寒岳登山口―(170分)→剣が峰コルー(40分)→雌阿寒岳―(30分)→剣が峰コルー(100分)→雌阿寒岳登山口

阿寒湖温泉からアクセスするならこのルートを使うのもおすすめ。比較的緩やかなコースで、だんだん雌阿寒岳が近づいてくる様子が楽しめます。

広い砂礫帯を通るので、雌阿寒岳が火山であることを最も実感できるコース。距離が長く、所要時間も5時間を超えますので健脚者向けといえるでしょう。

また、悪天候時には道が不明瞭になりますので、コンパスや地図は必須。ルートファインディングが要求される中級者向けのルートです。

①樹林帯からハイマツ帯、そして剣が峰コルへ

フレベツ林道の先にある登山口からのスタートはトドマツの樹林帯。その後、ハイマツ帯を進んでいくと次第に視界が開け、見えてくるのは剣ヶ峰。徐々にきつくなる硫黄の臭いを感じながら砂礫帯へ突入です。

②月の上? だだっ広い砂礫帯を進む

剣が峰の脇を通り過ぎると、まるで月面を歩いているかのような錯覚に陥ってしまう広い砂礫帯を歩きます。ペイントの目印がありますが、単調な地形でほかの目印があまりありません。霧が発生しているときなどの悪天候のときは道に迷わないよう、最新の注意を払ってください。

③オンネトーコースと合流して頂上へ

岩陰に咲くメアカンフスマやメアカンキンバイなどの高山植物を楽しみながら砂礫帯と進むと、緩やかな勾配を登ってきた身には少々こたえる若干きつい勾配が。ここを登り切るとオンネトーコースと合流。ここから右に道を進み、左手に見える青沼を目指して頂上へ。

雌阿寒岳登山の疲れは温泉で!

下山後の疲れはしっかりとりたいもの。火山である雌阿寒岳の恵みを最後までいただくなら温泉がおすすめ。良質の温泉はリラックス効果も抜群。雌阿寒岳周辺には、2つの日帰り入浴ができる温泉エリアがあります。

山の宿 野中温泉

営業時間 7:00~19:00
料金   大人200円、小人100円

山の宿 野中温泉

まりも湯

営業時間 9:00~22:00
料金   大人500円、小人250円

まりも湯

雌阿寒岳で大自然を満喫しよう!

阿寒湖やオンネトー、遠くには斜里岳なども眺められる頂上からの景色は北海道の広大なイメージにピッタリ。荒々しい火山活動の名残や今も盛んな大地の活動も感じることができる雌阿寒岳は、手軽に登山の魅力を味わうには最適の山といえるでしょう。北海道にある日本百名山の中でも最短時間で登れるため、日本百名山制覇のスタートとしてチャレンジするのもいいかもしれませんね。