現役富士山登山ガイドのヨッシーです。ガイド歴は5年、毎年20回以上ガイドとして登っており、合計で2000人以上のお客様を山頂にお連れしています。
そんな私が今回は「富士山登山における服装と最低限の装備」を現役富士山登山ガイドの生の情報を入れながらご説明します。
服装や装備を選ぶ前に富士山の気温を知ろう
富士山登山の服装を選ぶ前に最も気をつけなければならないのは、気温です。(この知識大事です)
ほとんどの方が目指す、富士山山頂ご来光時(夜明け前)の気温は0℃から5℃です!
東京の真冬の夜明け前の気温とほぼ同じです。
そして、登山開始の富士山5号目の気温は大体20℃から25℃、しかし、太陽は真夏の太陽なので晴れているとかなり暑いです。
イメージとしては、 晴れた6月の日中から真冬の夜明け前 に向かって登山していく感じです!
想像できますか?それを踏まえて、暑さ寒さを考えた服装を持って行きましょう。と、ここまでは大体どこにでも書いてある情報です。
ここからは現役富士山登山ガイドの生の情報です。
防寒対策が足りてない方が多い
まず、「防寒の対策が足りてない人」がとても多い!
気温だけ見れば真冬程度ですが、富士山の山頂は風が強い時も珍しくありません。風速5 メートル 以上というのはザラです。風速1 メートルにつき体感温度は一度下がります。気温5℃の温かい日だとしても風が5 メートル以上吹けば体感気温は氷点下に。
また、お盆までは比較的暖かいですが、シーズン終わりの8月末以降は気温も氷点下になる日もあります。頂上には氷柱が出現し小雪が舞うことも。その気温に対応できる服装が必要になります。
山小屋は、週末は満員で入れてもらえない
山小屋もいっぱいあるから最悪入れてもらえばいいと考えている人もいるでしょう。
シーズン中、平日は空いているところもありますが週末はほぼ満床です。 夜中の寒さに耐えかねて小屋に入れてもらおうとしても、小屋が満床だったら入れてもらえません。体力と寒さの限界を超えているのに、断られている人を何度も見てきました。
さらに、一番登山者の多い吉田ルートの山頂には 、ご来光時に休憩ができる小屋は2件しかありません。その2軒もツアー客が優先で一般の方が入れることはほとんどないのです。
そのような中、週末になると5000人以上の人が山頂を目指します。 どこかの小屋に入って暖を取りたくても取れない人がほとんどです。これが富士山登山の現実です。「寒い思いをしたくない人」は外で夜を明かせる服装や装備を是非持って行ってください 。
富士山登山の服装の選び方
先ほど非常に寒いと申しましたが、富士山登山に特別な服装が必要かと言うとそうでもありません。普段使っているものの中にも山で使えるものが結構あります。 一覧をあげますので、まず持っているものを探していただいて、その後足りないものがあればレンタルまたは購入をしましょう。
Tシャツや下着の選び方
綿は汗で濡れた時に乾きづらいため、できれば綿ではなく化学繊維や薄手のウールのものが望ましい。下山の暑さ用に半袖1枚と日差し対策のために長袖を1枚用意(あればアームカバーでも可)。汗や雨で濡れた時のために替えを必ず持っていきましょう!
例 スポーツ用のTシャツ、化学繊維素材の下着
ウィンドブレーカー
休憩時などの肌寒いときに便利です。夜中の寒いときにも1枚中に着ると防寒力が増します。
防寒着(フリースやダウン等)
家にあるユニクロなどのもので十分。 ダウンは濡れると保温力がなくなるので汗で濡らさないように注意。私は寒がりなので念のため2枚持って行きます。
パンツ
ゆとりのある動きやすいもの 。これも綿素材やジーンズはなるべく避けましょう。レギンスやタイツにスカート、ハーフパンツ でもいいですが、 寒い時のためにもう一枚薄手の履けるものがあると良いでしょう。
帽子
日よけのためにもハットタイプがおすすめです。防寒にもなります。 風が強いと飛ばされるので、飛ばされないように工夫しましょう(100円ショップ等で服等と止めるクリップが売ってます)
靴下
中厚手のものが良いです。これもできれば綿は避けたい。防寒や濡れた時のためにも2足持って行きましょう。
富士山登山の最低限の装備の選び方
最低限の装備の選び方と注意点をまとめてみました。
・レインウェア(上下セパレートの物)
レインウェアだけは絶対に持って行ってください。防寒のためのウィンドブレーカーも兼ねています。登山用じゃなくても結構です。縫い目がシーリング(テープで防水)してある透湿性のあるものを選びましょう 。ホームセンターやワークマンでも売っています。レンタルもありますがレインウェアは買ってもいいと思います。雨の日の外遊びや散歩でも使えるので遊べる範囲が広がって楽しくなりますよ!
- ガイドからの注意点
また、レインウェアとして撥水加工のものや縫い目がシーリングされていないものを持ってくる人がいます。両方とも雨が降ったら使い物になりません。命に係わる最低限の装備です。安くてもいいので雨が防げるレインウェアを選びましょう。
・ザック
20リットル以上。 荷物を入れてストラップを締めて動いても揺れないものが良いです。大きめのデイパックで十分。 雨対策のために着替えの服等はビニール袋に入れてからザックに入れると良い。
・ヘッドライト
ライトはヘッドライト(頭につけられるもの)を持って行きましょう。 岩場などで両手を使って上るところもありますし、安全のためにも手持ちは避けましょう。 100円ショップのものは少々暗いので、ホームセンター等で1000円前後で売っているものが望ましいです。 これも家に一つあると夜の散歩や災害時にも使えるので重宝します。予備の電池を忘れずに。
- ガイドからの注意点
・手袋
怪我防止や防寒のために必ず持っていきましょう。こだわらない方は軍手でも可。2枚あるとより暖かいです。
・靴
ハイカットのトレッキングシューズがベスト。怪我の予防にもなりますし暖かいです 。これは買うと高いためレンタルする価値があります。 脚力に自信があり、雨の日は登らないというのならスニーカーでも大丈夫です。
- ガイドからの注意点
富士山登山で必要な持ち物とあると便利なものは?
富士山登山で必要な持ち物の選び方やこれを持ってきた方がいうものを、ガイドの立場からご紹介します。
富士山登山で必要な持ち物
・携帯電話
富士山はほとんどの場所で繋がります。登山中に何かあった時のために必ず持ちましょう。5合目や6合目に山小屋や救護所の電話番号が載っているパンフレットがあるので必ず持って行ってください。
また、登山中は機内モードにしておくと電池の消耗が防げます。 バッテリー切れで使えないことがないように気をつけて登山しましょう。
・飲み物
甘くない水やお茶がいいと思います。持ちすぎると重くなるので1 Lぐらいがおすすめです。足りなくなったら途中の小屋で買いましょう。500mlのペットボトルで500円前後。
・行動食
せっかくなので楽しくなるような好きな物を持って行きましょう。 結構な運動量なので体重も増えないと思います。もし増えたとしてもダイエットは明日から。
・お金
まずトイレのために小銭が必要です (1回200~300円)後は体調不良の時に山小屋で休憩することも考えて、少なくとも1万円は余分に持って行きましょう。
・日焼け止め
富士山のような標高の高い所は、太陽との間の空気の層も薄くなるため、紫外線が非常に強くなります。平地と同じように考えていると痛い目にあうので肌の弱いかたは必ず塗るようにしましょう。
・ファーストエイドキット、薬類
絆創膏やテーピングその他個人で必要なもの
富士山登山であると便利なもの
ここからはなくてもいいけどあると便利なものをあげていきます
・ ストック
脚力に自信のある方はなくてもいいですが、自信の無い方はあると楽です。脚の限界が来る、下山時に効果を発揮します。使えないと邪魔になるだけなので少し練習して本番に備えましょう。 レンタルで当日だけというのは使えなくて邪魔になってしまうかもしれません。
・ゲイター(スパッツ)
下山時に靴の中に砂や小石が入ってくるのを防ぎます。雨対策にもなります。
- ガイドからのアドバイス
・耳栓、アイマスク
他の人のいびきや物音、明かりなどに邪魔されないで寝るためにあると良い。
- ガイドからのアドバイス
・マスク
富士山は晴れた日は砂埃がすごいです。吸い込まないためにマスクがあった方がいいでしょう。
・サングラス
砂埃と日焼け対策にあった方がいいです。
・タオル
日よけや防寒にもなりますし1枚あると便利です。
・ゴミ袋
急な雨の時にバックの中身を入れれば濡らさなくてすみます。体にまけば防寒にもなります。1枚あると便利です。45 L ぐらいのものがおすすめです。
・バフ、ネックゲイター
防寒やマスク代わりになります。
・エマージェンシーシート
包まって防寒に使用します。かなり暖かいです。100円ショップに売っています。
・ティッシュ
あるとなにかと使えます。
・モバイルバッテリー
富士山の山小屋は基本的には充電させてもらえません。携帯をよく使う人は必携です。
富士山登山で持ってこない方がいいもの
持ってくる人が結構いるが富士山では使えないもの。
・歯磨き粉
大体の小屋で使わないように言われます。
・匂いのある制汗スプレーやボディーシート
これも小屋で禁止される所が多いです。
・必要以上の装備や荷物
山の経験がないとあれもこれもあった方がいいのではないかと思いがちです。
実際に余計なものをたくさん持ってくる人をよく見ます。
しかし、装備は軽い方が登山は楽ですし安全です。リスクヘッジ以外の理由で”たぶん使わないけどあったら便利”というものは持って行かないことをお勧めします。必要のない荷物は5合目のコインロッカーを活用しましょう。
まとめ
以上、現役富士山登山ガイドによる服装と最低限の装備のご案内でした。参考にしていただき、安全で楽しい富士山登山にお出かけください。あなたのことを最高のご来光が待っています。