今回は、八ヶ岳の北に位置する北八ヶ岳最高峰、天狗岳に行ってきました。
八ヶ岳は日本を代表する山々を抱える長野県、山梨県に位置し、関東圏の登山者に長く愛されている山域です。アクセス、登山口の数などハード面に優れているだけではなく、豊かな自然と、その自然を享受して生きる人々の暮らしを垣間見るなど、多くの魅力に溢れています。
八ヶ岳とは
八ヶ岳は遥か昔の火山活動によって130万年程前に生まれた、幾つもの峰を持つ連峰です。その名の由来は諸説あり、沢山の峰を持つため、文字通り八つの山があるため、幾多の谷筋があることなどが考えられるようです。
主峰の赤岳を中心に2000m級の峰が存在、また豊かな泉源を持ち、麓を含め多くの温泉、鉱泉を持ちます。晴天率も80%と高く、冬に麓の原村、茅野から見る深く透き通った青空と峰々は「八ヶ岳ブルー」と呼ばれています。
八ヶ岳の冬登山の注意点
八ヶ岳の冬は前述の美しい突き抜ける青い空と厳冬期ならではの冬の自然を堪能することができます。とはいえ、岩稜帯のある厳冬期登山では、滑落防止技術、ロープワーク、登攀技術、ルートによってはアイスクライミング技術を要する厳しい山になります。
冬の天狗岳でも遭難事故が報告されており、吹雪による視界不良、低体温症などにより亡くなられています。十分な技術を習得し、夏山に八ヶ岳を登り経験を経てから挑戦しましょう。
天狗岳とは
天狗岳は、南北30kmにも及ぶ八ヶ岳の北方に位置し、標高は2646mです。八ヶ岳では唯一の双耳峰で、東天狗岳と西天狗岳の二峰から成ります。北八ヶ岳エリアでは最高峰で、北に車山、蓼科山、南に硫黄岳を始めとした八ヶ岳連峰を望み360度の展望が楽しめます。
天狗岳の難易度
天狗岳の登山ルートは、難易度の高い上級者向けのルートから初心者向けのルートまで、バリエーション豊かな登山道があります。
今回は、難易度が低い初心者におすすめの麦草峠から登るルートをご紹介します。
天狗岳の登山口情報
天狗岳は豊富な登山口があります。西側に位置する渋の湯、唐沢鉱泉からアクセスする方法、北側の麦草峠からのアプローチ、南側からの縦走も可能です。
西側の渋の湯、唐沢鉱泉からであれば約4時間で登頂でき、日帰りの範囲内になります。麦草峠からも4時間から5時間ほどで登頂できますが、西天狗岳との周回ルートを考慮すると、3者の中では唐沢鉱泉ルートが効率が良いといえるでしょう。
天狗岳登山の服装や装備
天狗岳は2000mを超える山となるので、ハイキングではなく、いわゆる登山装備が必要となります。今回は山小屋でのテント泊をしているので、ここにテント、寝袋などを追加しています。
登山用バックパック、レインウェア、地図、コンパス、水を含めた行動食の他、万が一行動不能、遭難した際のツェルトなどを持つと良いでしょう。
また、森林限界を超えた岩稜帯では足を挫きやすく、縦走や定期的に山を歩いていない場合は、ハイカットの登山靴でソールが比較的固めの物を履くと、岩場で安定した歩行ができるようになります。
今回の天狗岳登山ルートと所要時間
1日目
参考コースタイム
麦草峠(白駒池入口側)ーニュウ:1時間35分
ニュウー黒百合ヒュッテ:1時間5分
黒百合ヒュッテー東天狗岳:1時間20分
東天狗岳ー黒百合ヒュッテ:55分
2日目
下り
参考コースタイム
黒百合ヒュッテー高見石小屋:1時間40分
高見石小屋ー麦草峠(白駒池入口側):40分
水場とトイレ
各登山口には施設があるので、管理費用、協力金などをお支払いして利用が可能です。麦草峠方面では各山小屋があるので、そこでも同条件で利用できます。水場は無いので事前に用意をしておきましょう。
天狗岳の登山初心者向けの麦草峠ルートを解説
麦草峠(白駒池入口側)ーニュウ(1時間35分)
麦草峠は登山口が2つあり、麦草ヒュッテ側と白駒池側があり、今回は白駒池側に1日500円(連日利用の場合は事前払い)で駐車し、登山を開始します。
白駒池までは整備された木道を歩きます。
北八ヶ岳は苔が多く、樹林帯は静かで日本の原風景を楽しむことができます。
白駒池を横目に歩いていくと、高見石小屋とニュウ方面の分岐になります。今回は上りにニュウを経由していきます。
白駒池を超えるとしばらく平地を歩き、ニュウ手前の上りに取りつきます。
ニュウは2352mの山で、漢字では乳と表示されています。(写真はニュウ直下から)
今回は通過のみとし、その後黒百合ヒュッテまで若干のアップダウンを繰り返しながら稜線を歩きます。
ニュウー黒百合ヒュッテ(1時間5分)
東側斜面はガレの崖となっているので、足を踏み外さないよう注意して歩きましょう。
稜線を歩くと天狗岳と黒百合ヒュッテの分岐である中山峠に到着します。
一度テント泊の受付を済ませに黒百合ヒュッテに向かいます。
黒百合ヒュッテは天狗岳の北側に位置し、登頂時のベースとして最適の場所にあります。
看板には小屋ならではの夢の様なメニューがズラリ。
テントは1人1,000円で、テントを含めた宿泊の方には水が補給させて頂けます。他の方の分を配慮してありがたく頂きます。
テントを設営し、最低限の荷物を持って東天狗岳に向かいます。
黒百合ヒュッテー東天狗岳(1時間20分)
中山峠まで一度戻り、東天狗岳への岩場を登っていきます。荷物を背負っていると最後の山場であるこの岩場が足に堪えますが、今回はアタック用の装備のみなので、軽快に登っていきます。森林限界を超えると視界が開け、一面に八ヶ岳を含めた山々を一望できます。
本格的なクライミング要素はない岩場ですが、両手足の一点を使って登る三点支持を始めとした基本動作を習得しておくと、岩稜帯でのストレスも少なく安全に登ることができます。また岩場はグローブをしていると滑りやすいので、シビアな場所では素手を使いましょう。
岩場を超えると、控えめに佇む東天狗岳の標識が見え、間もなく到着です。
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東天狗岳の眺望は、個人的に南側が素晴らしく、硫黄岳の姿はいつ見ても圧巻です。
また2000mと国内では高峰に位置する山域でありながら、人間との距離感も近いのが特徴の八ヶ岳。かつて住んでいた茅野市、よく野菜を買いに行っていた原村を見ると、とても懐かしい気持ちにさせてくれます。
西天狗岳もと思いましたが、雲が湧き視界がところどころ見えなくなってきたので、大事を取ってテント場に戻ることにしました。(画像は残雪期に来た西天狗岳山頂)
宿泊
テント場に戻り、着替えを済ませて食事にします。今回は初心者を含めた山仲間3名と少人数パーティ。食事も個々に済ませ思い思いの時間を過ごします。
日が暮れるまで、本を読み、音楽を聴き、しょうもない話など、日常では必ず「やる事」が存在し、何かに追われるかのように1日が過ぎていきます。大人になればなるほどそうした時間は増えますが、山ではむしろやることが少なく、山を登るという行為を達成するために時間を費やします。
体と心を休めるこの時間が登山には必要であり、またこの何もすることがない時間を感じるのも、文明社会にいる人間にとっては、とても有意義な時間であるといつも感じています。
2日目 黒百合ヒュッテー高見石小屋(1時間40分)
黒百合ヒュッテを出発し、高見石小屋を目指します。小屋までに経由する中山付近の展望地では、北アルプスを始めとした日本の名峰を望むことができます。
展望地を過ぎると急な岩場混じりの下りになります。日帰りの場合は疲労により足を挫く場合があるので、時間をかけても良いのでゆっくり下っていきましょう。
下りきって少し登り返すと、間もなく高見石小屋です。
高見石小屋ー麦草峠(40分)
高見石小屋から白駒池を経由し、登山口の駐車場に戻ります。危険な場所も無いので、足元と道迷いに注意して戻りましょう。
天狗岳下山後のおすすめの温泉
昼前には下山できたので、この日は今回とは別の登山口である唐沢鉱泉に寄りました。良質なお湯で、疲れた体を癒しました。冬はマイカーではアクセスできない秘湯になるので、是非訪れてください。
いかがでしたか。天狗岳の1泊登山は普段日帰り可能なルートを贅沢に1泊するのんびりプランなので、初めてのテント泊登山でトライされてみてはいかがでしょうか。