今回は、まだキャンプやアウトドアでコーヒーを淹れたことのない方に向けて、バリスタの歴10年の筆者がキャンプコーヒーを楽しむために必要な道具や美味しい淹れ方を紹介していきます。
キャンプで淹れるコーヒーのレギュラーとインスタントの違いは?
コーヒーにはコーヒー豆を粉砕して、お湯や水に浸しそこから成分を抽出したレギュラーコーヒーと抽出したコーヒーを乾燥させて粉末状にしたものを、お湯や水に溶かして飲むインスタントコーヒーの2種類があります。キャンプやアウトドアで飲むにはそれぞれにメリットとデメリットがあります。
インスタントコーヒーの特徴
「景色が調味料になるから、とにかく手軽なものがいい」という方にはインスタントコーヒーがおすすめです。
最近では技術の進化でインスタントコーヒーもかなり美味しくなってきました。それでも香りや風味は淹れたてのレギュラーコーヒーにはまだまだ及ばないのが実際のところ。ただインスタントコーヒーは手軽に淹れられることに加えて、とても軽量というメリットがあります。この点はキャンプに持っていくことを考えればとても大きなポイントですね。
レギュラーコーヒーの特徴
「大自然の中でコーヒーを淹れる時間も楽しみたい」という方にはレギュラーコーヒーがおすすめです。
インスタントコーヒーに比べて格段に香りも味も良いです。最近ではアウトドアに特化した様々な抽出器具があるので、お気に入りの道具を探せることも楽しみの一つですね。ただし、インスタントコーヒーと違って、コーヒー豆の他に抽出器具など、荷物が増えるというデメリットもあります。
キャンプやアウトドアでコーヒーを淹れるのに必要な4つの道具
キャンプやアウトドアでコーヒーを淹れるためには必要になる道具がいくつかあります。これからキャンプやアウトドアでコーヒーを楽しみたいという方は是非揃えてみましょう。
必要な道具①バーナー
アウトドアでコーヒーを淹れるためにはお湯を沸かすバーナーが必要になります。コーヒー以外にも食事を作るときには必須の道具なので、既に持っている方も多いと思います。
サーモボトルにお湯を淹れて持っていく事もできますが、冷めやすい上、重くなるのであまりオススメではありません。バーナーはアルコール式やガソリン式などもありますが、初心者の方には使いやすいガス式のバーナーがおすすめです。
必要な道具②ケトルまたはクッカー
インスタントコーヒーや使う抽出器具によっては調理の際に使うクッカーでも問題ありません。もしハンドドリップを楽しみたいという方なら、お湯を細く注ぐことのできるケトルがおすすめです。
必要な道具③コーヒーミル
レギュラーコーヒーを淹れる場合はコーヒー豆を粉砕するミルが必要になります。テーブルなどにおいて使うものが多いですが、キャンプやアウトドアに持っていく場合は、手動で挽けるハンドミルがおすすめです。荷物を減らしたい場合は、自宅で挽いて挽いた粉を持って行っても良いでしょう。
必要な道具④ドリッパーなどの抽出器具
レギュラーコーヒーを淹れる場合は、ドリッパーなどの抽出器具が必要になります。自宅で使っているものがあればそれでも大丈夫ですが、アウトドア用に設計されたものは軽量でコンパクトになるのでおすすめです。
必要な道具⑤マグカップ
アウトドアでコーヒーを飲む場合に残念なのが、気温が低いためコーヒーがすぐ冷めてしまうことです。特にアウトドア用のアルミやチタンのマグカップを使っている場合は、5分程度で冷めることもあります。
そこでおすすめなのが、リッド付きのマグカップやタンブラー。フタをすることで保温性が格段に良くなるので、温かいコーヒーをゆっくりと楽しむことができます。
軽さ重視の方はプラスチックのものがおすすめ。耐久性が気になる方は、多少重くはなりますがステンレス製のマグカップを使いましょう。
キャンプやアウトドアでコーヒーを楽しむおすすめの淹れ方
キャンプやアウトドアでレギュラーコーヒーを淹れる場合、必ずコーヒー豆の他に抽出器具が必要になります。最も一般的なのは、粉砕したコーヒーにお湯を注ぎフィルターでろ過するハンドドリップでしょう。ですが、その他にもアウトドアに適したコーヒー抽出器具があります。
- ハンドドリップ
- フレンチプレス
- エアロプレス
それぞれの抽出器具にメリット・デメリットがあるので、是非気に入った淹れ方を見つけてくださいね。
キャンプコーヒーと言えばハンドドリップ!
ハンドドリップは日本では最も一般的な抽出方法で、抽出器具もキャンプやアウトドア用の物は軽量で分解することができたり、バネを縮めることでコンパクトにすることが可能です。
メリット | ・コーヒーを淹れている時間や感覚を最も味わうことができる淹れ方 ・お湯の注ぎ方によって好みの味を作りやすい ・抽出したあとに残った豆かすはフィルターごと捨てられるので後処理が楽 |
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デメリット | ・お湯を細く注ぐためにケトルが必要になる ・お湯の注ぎ方で味が変わるので、慣れるまで味にムラがでやすい ・風があると粉やフィルターが飛んでいったり、最悪ドリッパーごと倒される |
ハンドドリップの美味しい淹れ方
1人分 | 2人分 | 3人分 | |
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豆の量 | 15g | 30g | 45g | 挽き具合 | 中粗挽き | 粗挽き | 粗挽き |
出来高 | 190cc | 390cc | 590cc |
1杯用と2〜3杯用ではコーヒー豆の挽き具合を変えています。なぜならハンドドリップでは、コーヒー豆の量を増やすとお湯が落ちてくるスピードが遅くなるからです。
お湯が落ちてくるまでの時間が長くなりすぎると、雑味が多くなり飲みにくいコーヒーになってしまいます。そこで豆の量を増やすときには荒く挽くことで、お湯をできるだけ早く落とすようにします。
コーヒーは低い温度のお湯で淹れると味が薄くなりやすいので、キャンプやアウトドアでハンドドリップをする場合は、自宅で淹れるときよりもコーヒー豆の量を少し増やしたレシピがおすすめです。
ハンドドリップで失敗する理由で最も多いのは、注ぎ方ではなく豆やお湯の量をきちんと計量せずになんとなく淹れてることにあります。豆の量とお湯をきちんと計量することで、失敗する確率が劇的に少なくなるので、気になる方は自宅で計量したものを小分けにして持っていくと良いです。
コーヒー豆と同じようにお湯の量もしっかりと計量し、お湯の温度は90℃前後が目安です。目盛り付きのシェラカップやクッカーを使えば現地でお湯の量をしっかりと計量することが可能になります。
コーヒー豆は挽いた瞬間から香りの成分が発散していき、さらに酸化して酸っぱい味に変化していきます。キャンプでハンドドリップをする場合はできるだけコーヒーミルを持って行って、現地で挽くようにしましょう。そうすれば、香り高くて、風味豊かなコーヒーを淹れることができます。
もし荷物に余裕が無い場合は、出発の前夜などできるだけ直前に挽いた豆を持っていくことで、酸化を抑えることができます。
ハンドドリップを美味しく淹れるためには、ある程度お湯を細く注ぐことが重要になります。ですが、キャンプケトルでお湯を細く注ぐのはとても難しいです。そこで、今回はお湯をそんなに細く注ぐことができなくても美味しく淹れられる方法を解説していきます。
お湯の注ぎ方のポイントは、渦巻きを描くように中心から500円玉程度の大きさでお湯を注ぎ、30秒ほど蒸らす。蒸らしの後に、お湯を30秒毎に3回程度に分けて注ぐことで、最適な濃さのコーヒーを淹れることができます。
ハンドドリップではお湯の注ぎ方の技術よりも、注ぐ回数を変えることの方が美味しいコーヒーを淹れることに繋がります。同じお湯の量の中で注ぐ回数を多くすれば濃い味に、少なくすれば薄い味に仕上げることが可能になります。
キャンプでハンドドリップをする時の便利アイテム
キャンプなどのアウトドアでハンドドリップをするときに問題となるのが風です。室内で淹れるときとは違って屋外では強い風が吹くことがあり、強風に煽られペーパーフィルターや挽いたコーヒー豆が飛んでいってしまうこともあります。
そんなときに役立つのがバーナーに使う風防です。風防を使うことで、風の影響を受けること無くコーヒーを淹れることができます。もし風防がない場合は岩陰や木など風よけになる場所を探して淹れるようにしましょう。
キャンプで手軽に風味が最も強いフレンチプレス!
フレンチプレスはお湯と挽いたコーヒー豆を注射器のような物の中に入れ、上からチャンバーを押すことで圧力をかけながら抽出する器具です。
その味の良さから近年最も注目されている抽出器具で、世界大会なども開催されており、元々アウトドアでコーヒーを淹れるために開発された器具なので、キャンプやアウトドアで使用するのにもおすすめの抽出器具です。
家庭用のものはガラスのビーカーでできたものが一般的ですが、キャンプやアウトドアに持っていく場合はアルミかステンレス製のものを選びましょう。
メリット | ・コーヒーオイルがしっかり抽出されるため、風味がダイレクトに味わえる ・お湯を入れて待つだけなので特別な技術が必要なく、失敗も少ない ・アウトドア用のアルミ製のものであれば、そのまま火にかけることができるので他にポットなどが必要ない |
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デメリット | ・粉がポットの底に溜まるので豆かすの後処理が大変 ・微粉と呼ばれる極細かいコーヒーの粉も一緒に口に入ってくる ・気温が低いと、蒸らしている時間に冷めやすい |
フレンチプレスの美味しい淹れ方
1人分 | 2人分 | 3人分 | |
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豆の量 | 13g | 26g | 39g |
挽き具合 | 中挽き〜粗挽き | 中挽き〜粗挽き | 中挽き〜粗挽き |
湯量 | 200cc | 400cc | 600cc |
出来高 | 約170cc | 約350cc | 約520cc |
フレンチプレスでは、コーヒー豆とお湯の割合さえ守っていれば量を増やしても、ほとんど味を変えること無く一度に大量のコーヒーを作ることができます。
フレンチプレスでコーヒーを淹れるときに最も重要なのが、コーヒー豆とお湯の割合をきちんと計量することです。きちんと計量していれば、失敗することはほとんどありません。また、コーヒー豆はできれば現地で挽いた直後の物を使うようにしてください。
お湯を沸かします。アルミやチタン製のフレンチプレスならそのまま火にかけることができるので便利です。
お湯が沸いたら、挽いたコーヒー豆を淹れます。そのまま火にかけることができないタイプのフレンチプレスだったら先にコーヒー豆をいれておき上からお湯を注ぎます。その後10回程撹拌しましょう。
コーヒー豆の成分がしっかりでるまで4分間待ちます。
ゆっくりとプレスして、コーヒーの粉を底に沈めていきます。この時にできるだけ豆に圧力がかからないようにゆっくりとプレスするのがポイントです。あまり強く押しすぎてしまうと、雑味がたくさんでてしまいます。
できたコーヒーをカップに注げばおいしいコーヒーの完成です。
キャンプでフレンチプレスをする時の便利アイテム
紙のフィルターよりも目の荒いフィルターを使っているフレンチプレスでは、微粉と呼ばれる豆を挽いたときに出る極細かい粉が液体の中に入ってしまいます。そのためハンドドリップなどに比べ舌触りがざらざらしてしまうので、それが苦手という人も多いでしょう。
そこで、おすすめなのがその微粉を除去するためのパウダーコントロールストッカーという器具です。使い方は簡単で、微粉だけが落ちるふるいのついた筒に挽いたコーヒー豆を淹れてシェイクすることで、微粉だけを取り除くことができます。これを使うことで、フレンチプレスで淹れたコーヒーのザラザラとした口当たりをかなり軽減することが可能。
また、微粉は雑味の元にもなるので味わいもクリアに仕上げることができます。ただし、挽いた粉のおよそ10〜20%が微粉として除去されてしまうので、それを計算に入れてコーヒー豆を挽く必要があります。
キャンプで拘りの抽出器具エアロプレス!
エアロプレスとは注射器のような仕組みで、チャンバーの中にコーヒー豆とお湯をいれてプランジャーで加圧しながらコーヒーを抽出します。
キャンプなどのアウトドアでは、そもそもの沸点が低かったり、気温が低い事が多いのでコーヒーの味は薄くなりがちですが、エアロプレスなら加圧しながらコーヒーを抽出するので、湯温が低かったとしても短時間でしっかりと味を出すことが可能です。
紙フィルターを使用するため、豆かすの後処理が楽だったり、クッカーやシェラカップから直接お湯を注いでも問題ないことも大きな利点です。
メリット | ・コーヒーオイルがしっかり抽出されるため、風味がダイレクトに味わえる ・お湯を入れて待つだけなので特別な技術が必要なく、失敗も少ない ・アウトドア用のアルミ製の抽出器具であれば、そのまま火にかけることができるので他にポットなどが必要ない |
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デメリット | ・粉がポットの底に溜まるので豆かすの後処理が大変 ・微粉と呼ばれる極細かいコーヒーの粉も一緒に口に入ってくる ・気温が低いと、蒸らしている時間に冷めやすい |
エアロプレスの美味しい淹れ方
1人分 | 2人分 | |
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豆の量 | 16g | 30g |
挽き具合 | 中挽き | 中細挽き |
湯量 | 260cc | 200cc+120〜180ccのお湯で割る |
出来高 | 約230cc | 320cc〜380cc |
エアロプレスはその器具の特性上、一気に沢山のコーヒーを作ることができません。2人分以上のコーヒーを一回で作る場合は、濃い目に出したコーヒーをお湯で割って飲むアメリカーノスタイルでの抽出になります。
また短時間でしっかりと味を出すために、ハンドドリップよりは細かく挽いたコーヒー豆を使うと良いです。
エアロプレスを美味しく淹れるには、タイマーや時計を使って時間を計りながら淹れた方が失敗が少なくなります。
フィルターを濡らしましょう。面積が小さいので少しのお湯で大丈夫です。
チャンバーにフィルターをセットしたら挽いたコーヒー豆を投入します。先が細いので豆をこぼさないように注意してください。
エアロプレスをサーバーやマグカップの上にセットして、お湯を60cc(2人分の場合は90cc)注ぎます。お湯を注いだら液体が少しずつ下に落ちていくので、その前に素早く5回撹拌して、20秒程待ちましょう。
20秒経ったら残りのお湯200cc(二人分の場合は110cc)注ぎます。エアロプレス本体を回しながら淹れると、コーヒー粉全体にお湯をかけやすいです。お湯を入れ終わったら味を出しやすくするためもう3回程撹拌。
プランジャーをセットすると液体がポタポタ落ちてくるのを止めることができます。あまり強く押しすぎないように注意して、しっかり味がでるまでもう30秒ほど待ちましょう。
30秒経ったらいよいよプレスの時間。プレスし始めてからコーヒーが落ちきるまで、30秒かかるくらいの力で圧力を加えていきます。豆が多かったり挽き方が細かったりすると、結構力がいるので注意。
写真ではガラスサーバーを使っていますが、割れる危険があるので真似しないでください。2杯分の場合はできたコーヒーを好みの濃さになるまでお湯で割って出来上がりです。
簡単本格コーヒーGROWER’S CUP COFFEE BREWER
最近アウトドアショップでもよく見かける、注ぎ口とフィルターがセットされた袋に挽いたコーヒー豆が入っているバッグです。お湯を注いで少し待つだけで簡単に淹れられるので、インスタント派の方にもおすすめです。
メリット | ・インスタント並の手軽さで、かなり美味しいコーヒーが飲める ・お湯以外に何も器具がいらないので荷物を軽減することができる ・袋を洗って別の挽いた豆を淹れることで再利用が可能 |
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デメリット | ・挽いてから時間が立っているため、挽きたての豆で淹れたコーヒーに比べると味が落ちる ・現地でバッグを再利用するとなると、豆かすの後処理が大変 ・人数分用意する必要があるので、結果としてかさ張ることも |
まとめ
いかがでしたか?私はお店や自宅で淹れたコーヒーも好きですが、自然の中で楽しむコーヒーは本当に大好きです。重量がかさむときは手軽なインスタントも良いのですが、大自然の中で自分が淹れたコーヒーはまた格別の味わいですよ。
是非いつものキャンプに特別なコーヒーという楽しみを一つ持っていきませんか?