四季折々の花、秋の紅葉、冬はスノーアクティビティと一年を通じて人気の高い安達太良山は、雪山デビューにも最適!
高村光太郎の詩集「智恵子抄」でも詠まれた安達太良山の青い空。「ほんとの空」を見にいってみませんか?
安達太良山ってどんな山?
安達太良山(あだたらやま)は福島県の中央にある標高1,728mの山。
ぽっこり盛り上がった乳首(ちちくび)と呼ばれる小山が山頂にあるので乳首山などとも呼ばれるそうです。
花の季節にはツツジやシャクナゲが咲き乱れ、秋の紅葉は東北随一を誇る美しさ。初心者から楽しめる百名山として人気があり、冬もスキーやスノーハイクを楽しむ人で賑わいます。
安達太良山の名前の由来は?
名前の由来は諸説あるようですが、安達太良山のある二本松地区は古くから安達ヶ原と呼ばれており、「安太多良」「吾田多良」と万葉集にも詠われています。智恵子抄には「阿多多羅山の山の上に/毎日出ている青い空が/智恵子のほんとの空だという」という有名な一節がありますね。
安達太良山の登山での注意点
安達太良山は気象庁によって常時観測されている活火山。1997年には有毒火山ガスによる死亡事故もあり、現在もガスが発生しているため通行禁止のエリアがあります。
また、強い風が吹くことも多く天候が変わりやすい山です。
悪天候時は方向を見失いやすいので位置確認をしながら慎重に進んでください。不安な場合は稜線へは出ずに引き返す勇気を持つことも大切。
技術的に難しい山ではないのですが視界不良になりやすく、晴天率が特に低い冬はピークハントできるチャンスが限られます。
安達太良山の登山ルートは3つ
奥岳登山口からの登山ルート(ロープウェイ利用)
【累積標高差】登り約422m、下り約821m
【距離】8.2km
【難易度】初級
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最も代表的なのが奥岳登山口からの周回ルート。
4月から11月までのグリーンシーズンならロープウェイが運行しているので、体力に自信のない方やお子さまでも安心。
「ほんとの空」を指さす智恵子さんの像があるJR東北線二本松駅からバス・タクシーを乗り継いで奥岳バス停へ。期間運行のシャトルバスもあるので事前チェックをお忘れなく。
車でアクセスする場合は、二本松I.Cより20分。あだたら高原スキー場の無料駐車場(駐車台数 1,500台)が利用できます。
塩沢口からの登山ルート
【累積標高差】登り 1,152m、下り1,152m
【距離】13km
【難易度】初級~中級
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JR東北線二本松駅から学校経由塩沢温泉行バスで塩沢温泉バス停へ。
登山口のある塩沢スキー場から沢沿いを歩いて山頂まで3時間30分。
途中には滝や巨大な岩など見どころも多く楽しい道ですが、歩く人が少なく足場の悪い箇所もあるので山歩きに慣れてからのほうが良いでしょう。
野地温泉口からの登山ルート
【累積標高差】登り931m、下り1,167m
【距離】約13km
【難易度】中級~
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安達太良山系最高峰の箕輪山(1,728m)と鉄山(1,709m)を経由して安達太良山までの縦走コース。
混雑する紅葉時期でも静かな山歩きができそうですが、鬼面山のあたりは悪路が続くので経験を積んでから天気のいい日にチャレンジしたいコース。
安達太良山の初心者におすすめの登山ルートを解説
今回は、奥岳登山口からロープウェイを利用して周回する代表的なルートをご紹介しましょう。
ロープウェイ山頂駅から安達太良山のピークを目指し、下山は昭和の雰囲気たっぷりなくろがね小屋に立ち寄り、渓谷沿いの自然遊歩道でマイナスイオンをたっぷり浴びてゴールの奥岳登山口へ下ります。
山頂駅~薬師岳~安達太良山(所要時間:1時間30分)
あだたら山ロープウェイ(大人\1,000/片道)で標高1,350mの山頂駅まで約10分間。時期によっては窓口に行列が出来ることもあるので余裕のある計画をたててくださいね。
車内のアナウンスと360℃広がる大パノラマが気分を盛り上げてくれます。
ロープウェイ乗り場からくろがね小屋までの間にトイレはありませんので、スタート前に立ち寄ることをオススメします。
「この上の空がほんとの空です」と書かれた標がある薬師岳の展望台へはロープウェイ山頂駅から5分ほど。
ここからの眺望はすばらしく、山頂駅から近いこともあって多くの観光客で賑わいます。
木道が整備された薬師岳パノラマパークを抜けて仙女平分岐あたりまで来るとようやく登山道らしくなり、やがて火山らしいゴツゴツした岩が現れます。
ハシゴがかかる最後の急登を越えたら安達太良山の山頂。
クサリを伝って乳首山の上まで登れば安達太良連峰、吾妻連峰や磐梯山がぐるり見渡せます。
山頂は風が強いので休憩時には上着を着て体を冷やさないように気をつけて。
安達太良山山頂~くろがね小屋(所要時間:1時間)
山頂から稜線を歩いて峰の辻へ。
見晴らしがよく気持ちよい景色が広がりますが、稜線では風の影響を受けやすいので防風対策も忘れずに。
沼の平の幻想的な噴火口を見て峰の辻を過ぎると、荒涼とした岩だらけの斜面になります。
広々とした斜面を岩にかかれたペンキマーク頼りに進みます。
霧が出ると方向を見失いやすい地形なので視界不良時は進む方角に注意してください。不安な場合は来た道を戻りましょう。
くろがね小屋~あだたら渓谷奥岳自然遊歩道~奥岳登山口(所要時間:2時間)
くろがね小屋でくつろいだら馬車道をのんびり下ります。
樹林帯の中を行く「旧道」もありますが、名前の通り馬車で荷を運んだ「馬車道」は平たく歩きやすい道です。
烏川に出会ったら「あだたら渓谷奥岳自然遊歩道」へ。
魚止滝、平滑床、紅葉滝など渓流沿いの景色が広がり、新緑や紅葉の頃はひときわ美しく見えることでしょう。
奥岳登山口まで戻ってきたら、バス停の前にある「あだたら山 奥岳の湯」(大人600円)で疲れを癒していくのもオススメです。
安達太良山の雪山登山のモデルルート(くろがね小屋泊)
雪と温泉を合わせて楽しめる冬! 雪山デビューに最適なルートもご紹介いたします。
今回ご紹介するのは入門コースですが、初心者だけで雪山へ入るのはたいへん危険です。
まずはガイドツアーや講習会などに参加してみるのがいいでしょう。
2日目)くろがね小屋~安達太良山~くろがね小屋~奥岳登山口
【所要時間】1日目)約3時間10分、2日目)約6時間50分
【累積標高差】登り約821m、下り約821m
【距離】17.4km
【難易度】初級
奥岳登山口~勢至平分岐~くろがね小屋(所要時間:3時間10分)
奥岳登山口から樹林帯をしばらく歩くと左手にカラマツの林が広がる広い道になります。
勢至平分岐あたりまでくると安達太良山の山頂が見えました。
この日は雪が少なく、小屋までアイゼンをつけずつぼ足。背中に背負ったワカンも出番がありません。
道もはっきりしていて危険箇所はありませんが、積雪すると傾斜したトラバース路になる箇所もあるので現地情報に注意してください。
くろがね小屋~峰の辻~安達太良山(所要時間:2時間20分)
日の出前、ヘッドライトの灯を頼りに歩き出します。
まだ体が目覚めていないので一歩ずつゆっくり・・。
雪山では汗をかかないようにゆっくりしたペースで歩くことが大切。汗で濡れると凍傷や低体温症のリスクが一気に高まります。特に、安達太良山のような稜線で一気に風が強くなる山は注意してください。体温だけでなくグローブなども風に奪われないようしっかり装着して。
アイゼンになれないうちはズボンに引っ掛けてしまうことがあるのでガニマタ気味にゆっくりペースを守りましょう。
振り返ると二本松の街でしょうか、夜明けの街がほのかにきらめいています。
少しずつ明けてくる空。ピンクに染まる雪山が美しくて何度もカメラのシャッターを切りました。
峰の辻あたりから風が強くなってきたので、オーバーグローブを重ねて襟元のジップを一番上まで上げました。
乳首山の上まで登れば安達太良連峰、吾妻連峰や磐梯山がぐるり360度の大眺望。遠くには雲海。一瞬だけ虹も見えました。
安達太良山~峰の辻~くろがね小屋~勢至平分岐~奥岳登山口(所要時間:4時間30分)
すばらしい景色に後ろ髪引かれる思いで山頂を後にし、再び峰の辻へ。
印象的なフォルムの鉄山と篭山を左右に見て、等間隔に立てられた竹竿を頼りに進みます。
火山らしい荒涼とした岩だらけの景色も雪に覆われて見渡す限りの白銀世界。穏やかな稜線と大きな空がどこまでも広がる東北らしいランドスケープ。
ひときわ硫黄臭が強くなってきたら、くろがね小屋はもうすぐです。
くろがね小屋で休憩をとったら馬車道を下ってゴールの奥岳登山口へ。
安達太良山登山におすすめする装備と服装
登山の基本装備
地図(地形図)、コンパス、 笛、計画書、 水筒(保温)、ヘッドランプ、予備電池、筆記用具、ファーストエイドキット、日焼け止め、保険証、携帯、時計、ツェルト、モバイルバッテリー
夏は虫除け、雪の季節はアイゼン・ピッケル・輪カンジキなど状況に応じて追加します。
安達太良山登山に適した服装
ベースレイヤー:インナー選びがとても大切。透湿性や速乾性に優れたシャツにドライインナーをあわせると肌をドライに保て快適です。
ミッドレイヤー:ウールのシャツやフリースなど季節によって調整します。
アウターレイヤー:防水透湿性に優れたタイプを選びましょう。防水だけでなく蒸気を外に逃がす機能も大切です。雪山以外ならレインウェアでもOK。
ズボン:夏場はショートパンツでもOKですがタイツなどで肌を隠し、思わぬケガやアブ・ブヨなどの危険な虫から守りましょう。冬は長ズボンの下にタイツで防寒対策を。
ソックス:靴擦れ予防にもなるので厚手のものを選びましょう。
靴:岩の上も歩くのでソールがしっかりしたトレッキングシューズ。足首を守るミッドカット以上のタイプがおすすめ。雪山では冬用か3シーズン用の靴が必要です。
帽子:季節に応じて、日よけ用と防寒用を使い分けて。
雨具(上下):山の天気は変わりやすいので必ず装備に加えてください。防寒着や防風用としても使えます。
ザック:夏場は~30L程度。装備が増える雪山は40L~。
そのほか(雪山):ウール手袋、アウター手袋、ゲイター、バラクラバなど
安達太良山登山の宿泊情報
素朴であたたかな県営の小屋・くろがね小屋。宿泊は予約制で、週末はあっという間に部屋(床)がうまってしまう予約の取りにくい人気の小屋です。
小屋の近くから湧き出る岳温泉は坂上田村麻呂による発見されたという歴史があり、酸性泉の湯は美肌効果が高いと言われています。
もうひとつの名物がこのカレー
歴代の管理人に引き継がれてきた逸品は夕食限定なので宿泊しないと味わうことができません。
こんなにすばらしいくろがね小屋ですが、福島県で建替えの話が進んでいるそうなので木造小屋のあたたかい雰囲気を楽しめるのもあとわずかかもしれません。
まとめ
福島県を代表する名山・安達太良山。いかがでしたか?
交通アクセスがよく東京から日帰りも可能。ロープウェイを使った気軽なハイキングなら小さなお子様が一緒でも安心ですね。
人気のくろがね小屋に泊まってのんびりするのもよし。東北の山らしい穏やかでスケールの大きな景色と温泉をセットで楽しんでくださいね。