キャンプにおける焚き火は暖を取ったり調理に使ったりと、とても重宝します。しかし、焚き火には当然ながら薪(まき)が必要で、重い斧や鉈を使って薪割りすることを面倒に感じる人も多いのではないでしょうか。
そのような場合におすすめしたい技術が『バトニング』です。ナイフで薪を割ることができるので、大型で重量のあるギアを用意する必要もなく、手軽に行うことができます。
今回はキャンプで重宝する、ナイフでバトニングするやり方と注意点を解説します。
ナイフでバトニングとは?
バトニングとは「ナイフで薪を割る」技術を指します。
薪の上側にナイフを当て、バトニング棒(細い薪や木の棒)でナイフの背を叩き割り進めていきます。薪割りといえば、斧や鉈のイメージが強いですが、軽く扱いやすいナイフで薪を割ることができるので、バトニングを習得している人も少なくありません。あまり大きな力が必要ないうえに難しい技術ではないこともあって、女性や初心者の方でも挑戦することができます。
木目によるバトニングの違い
バトニングには、木の繊維方向に沿って刃を縦に入れる場合と、繊維方向に沿って刃を横にいれる場合があります。
刃を縦に入れる時は、太目な薪を細く割って焚き付けにする場合が代表的です。バトニングがやりやすい太さの薪はナイフの2/3程度までと覚えておきましょう。
刃を横に入れる場合は、少し太目な枝を切断する時や表面に深い切込みを入れる時が挙げられます。
ナイフの先端ではなく根元を使う
バトニングというと、勢いよく叩くイメージがあるかもしれませんが、慣れないうちはノミのようにコツコツと細かく叩く方が安全にバトニングできます。どちらで叩くにしろ、バトニングのポイントは、力が安全で確実に伝わるように、ナイフの先端部分ではなく、主に根本付近を使うように心がけましょう。
斧や鉈の薪割りとバトニングの違い
斧や鉈の薪割りと比べるとバトニングのメリットは少なくありません。
ナイフは軽量で携帯性に優れ、調理やフェザースティックといった他の用途にも使うことができます。特にソロキャンプや登山のような、少しでも重量を押さえたいときには欠かせません。
また、斧の場合はその重さと体重移動を上手く活かせないときれいに薪を割ることはできませんが、バトニングではバトニング棒の叩く力で割っていくので、失敗することも少ないです。一方で、斧や鉈のように大きな薪を割ることが難しいため、小柄のものを選ぶ必要があります。
薪・バトニング棒・薪割り台を用意する
バトニングを始める前に薪とバトニング棒、そして薪割り台を用意します。
バトニングしやすい薪の選び方
薪は硬い広葉樹よりも比較的柔らかい針葉樹がおすすめで、厚みのない小柄なものが最適です。大きな薪では刃先まで埋まってしまいバトニングすることができません。
また節目があるような薪ではバトニングがしにくく、ナイフを痛める可能性があります。その他には、木の木目に沿うようにすると割れやすいので、木目もチェックしましょう。
バトニング棒の選び方
バトニング棒には細めの薪を使っても良いですし、周囲にある適当な木の棒を使ってもかまいません。
選ぶポイントはある程度の重さがあり力をかけても折れないことです。軽いものでは叩く力が弱いうえに折れてケガをしてしまう心配があります。もし、ちょうど良いバトニング棒がなければ、薪を割って適当なサイズのものを作りましょう。
しっかり握れて力を込めることができれば大丈夫です。機会が多いようであれば、専用のバトニング棒を1本作って携行しておくと、キャンプの度に作る手間もかかりません。
薪割り台
薪割り台はバトニングには必要不可欠です。上手く力を伝えるためには、硬いものを土台にする必要がありますが、コンクリートや石では割り切った際に刃が当たり欠けてしまいます。
ただ、バトニング台といっても木の板や輪切りの木、切り株で問題ありません。探すのが面倒であれば、あらかじめ用意しておくことをおすすめします。
ナイフを使ったバトニングの正しいやり方の手順
バトニングの方法はとてもシンプルで、要点を押さえておくことで無駄な力をかけず、よりスムーズに割ることができます。ここでは、ナイフバトニングの正しいやり方の手順をご紹介します。
ナイフは自分の体と平行の向き
バトニングに必要なものがそろったら、薪を薪割り台に立てナイフをまっすぐ当てます。この時、ナイフは自分の体と平行の向きです。
自分の体に対して垂直に叩くと、刃が曲がって入りやすく、力も伝わりにくいです。
ブレードの根元に入れバトニング棒を叩く
バトニングは主にナイフの刃先ではなく、根本付近を使うようにして、木を割り割きます。刃をなるべくまっすぐに下におろす為、刃と地面が平行を保つように気を付けて、バトニング棒を叩く。
刃先をバトニング棒で叩く
刃が薪に食い込んだら、出ている刃先部分をバトニング棒で叩き、さらに落としていきます。この時、割る薪が太いほど叩く部分が狭くなってしまいます。
下までまっすぐ割る
バトニングは下にいくほど、斜めになりやすくなります。なるべく水平を保つように、そのまま下まで刃を落として割り裂きます。
バトニングのコツ
バトニングの正しいやり方を覚えたら、上達するためのコツも覚えていきましょう
力が逃げないように固定する
薪割り台を使用すれば必要ないことですが、バトニングする木をそのまま地面に置くて叩くと、地面にめり込み力が逃げてしまうので、下に薪や木を置いてバトニングすると、力が伝わりやすいです。
刃は斜めにしない
ナイフを斜めにしてしまうと、バトニング棒の力がナイフに伝わりにくく、余分な力が必要になってしまいます。ナイフは地面と平行を最後まで保つようにする。
太すぎる薪は叩きにくい
バトニングする薪が太すぎると、ナイフを落とし込む時に刃先が出ないので、バトニング棒で叩くことができない。バトニングする薪の太さはナイフの刃長の2/3程度を選ぶようにする。
薪の太さに合わせて叩く位置を変える
細い薪がない場合、太い薪ではナイフの刃先を当てて根元を叩くとバトニングすることも可能です。
ナイフの刃先を使ったバトニングは、初心者の方ではナイフを痛める可能性もあるので、2/3までの薪でバトニングするようにしましょう。
ナイフでバトニングするときの注意点
ナイフでのバトニングは手軽に行える反面、本来薪割りに使う道具ではないので注意しなければならないこともあります。
ナイフが破損するだけでなくケガをしてしまうことも考えられるため、注意点を把握して安全第一で作業するようにしましょう。
ナイフが破損することがある
バトニングによってナイフが破損してしまうことがあります。
本来切るための道具なので、薪割りに使うと大きな負荷かかるのは当然です。刃が欠ける程度であればまだ良いのですが、折れると非常に危険なので扱いには気を付ける必要があります。
ナイフの破損は力の入れ過ぎもそうですが、1番の原因は「バトニングに適したナイフを使っていない」ことが少なくありません。
- シースナイフ
- 刃厚と刃長がある
- フルタング構造
これらのポイントを押さえた丈夫なナイフであれば、破損するリスクを最小限に抑えることができます。
ただし、傷むことは避けられないので、換えが効かなかったり思い入れがあったりするものは避ける、もしくは専用のナイフを用意する方が無難です。
刃の形状で割れやすさが変わる
バトニングではナイフの刃の形状が割れやすさに大きく関係します。
切るというよりも割れ目を押し広げながら割っていくので、形状によっては割りにくかったり挟まってしまったりなど上手くできないことも。コンベックスグラインドやスカンジグラインドのナイフであれば、バトニングに最適なのでおすすめです。
ナイフの刃が抜けなくなることも
バトニングをしていると刃が薪に挟まり抜けなくなってしまうことがあります。
材質が硬いと「割れないうえに抜けない」という困った事態になることも珍しくありません。そのような場合は無理に叩かず、割れ目にくさびを入れて広げナイフを取り出しましょう。くさびは薪の先端を削って作ることができます。
ナイフを扱うことに加え、木のささくれが手に刺さることもあるので、軍手や手袋(グローブ)を用意すると安全です。
バトニングナイフは調理には不向き
バトニングに使用するナイフはあまり調理に向いていません。
できないことはありませんが大型で刃厚もあるため、調理メインで使うのであれば別のナイフを用意した方が良いです。とはいえ、荷物を増やしたくないソロキャンプや登山の場合はナイフ1本で薪割りから最低限の調理もできるメリットは大きいです。
ナイフでバトニングするやり方と注意点のまとめ
バトニングはナイフ1つあれば薪を割ることができるキャンプにおすすめの技術です。
斧や鉈を忘れてしまったときにも慌てず対処できますし、ソロキャンプや登山など重いものを持ち運びたくない場面でも役に立ちます。覚えておいて損はないので、アウトドアに携わる人は挑戦してみてはいかがでしょうか。